Q. 『爪の所見』は、なにか
診断
A. Terry‘s Nails
症例:肝生検により、自己免疫性肝炎による二次性肝硬変と診断された。ステロイドとアザチオプリンを投与して経過をみている。
Terry‘s Nailsとは
- リチャード・テリーが、1954年に肝硬変患者で初めて報告した爪の所見で、肝硬変82/100人で認めた。
- Terry‘s Nailsは『基部が白くすりガラス様(ground glass opacification)で、遠位部は0.5-3.0mm程度のピンク~茶色である爪』である。通常、すべての爪で同様に認め、両側対称性である。
- 白くみえる外観は、爪床の変化であるため、あくまで『見かけ上の白爪症:Apparent Leukonychia』である。
- 病態生理は不明とされているが、エストロゲンとアンドロゲンのバランス異常、ステロイド代謝異常、爪床血管の変化で起こる考えられている。
*爪床の生検で、血管仮説を支持する所見(遠位部の血管拡張)が確認されている。
Terry‘s Nailsの親戚:Lindsay Nails
ピンク~茶色の遠位部が、爪床の約半分を占める場合は、Lindsay Nailsと呼ばれる。βメラノサイト刺激ホルモンの濃度の増加でメラニンが蓄積し発生するため、Terry‘s Nailsと異なり、腎疾患(慢性腎臓病など)に特異的な所見である。
鑑別疾患
肝硬変、うっ血性心不全、慢性腎不全、2型糖尿病、高齢化、低栄養、低アルブミン、甲状腺機能低下症など
有病率
小児では、報告が少なく、小児における有病率を報告した研究はない。
成人では、入院患者の25%に認めた報告もあり、小児より有病率は高いと思われる。
Terry‘s Nailsの意義
この患者のように、他に特徴的な所見を欠いている患者で、診断の補助となりうる。
身体診察で『爪に注目する』ことも重要。
【参考文献】
Terry`s Nails In Child. J Pediatr 2021;235:292.
Terry's nails: a window to systemic diseases. Am J Med 2011;124:602-4.