鉄欠乏性貧血:軽症でも(どのくらいで)鉄を補充すべきか?
日本には鉄欠乏性貧血の乳児におけるガイドラインはない.
【臨床症状・検査所見】
症状:軽度~中等度貧血までは無症状が多い、細胞分裂が早い皮膚・粘膜症状が多い
心臓肥大、Restless leg症候群、舌乳頭萎縮、舌・口角炎、青色強膜、匙状爪、Pica、Pagophagia、難聴、精神運動発達障害
【診断と検査所見】
・貧血の定義:下図
ヘモグロビン濃度(g/dl)に基づいた貧血(Lancet 2006 387 10021 907-916より)
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軽度 |
中等度 |
高度 |
6ヶ月〜4歳 |
11未満 |
10未満 |
7未満 |
5歳〜11歳 |
11.5未満 |
11未満 |
8未満 |
12歳〜14歳 |
12未満 |
11未満 |
8未満 |
・鉄欠乏症の定義:5歳未満 フェリチン<12μg/dl、5歳以上 フェリチン<15μg/dl
・鉄欠乏性貧血の定義:貧血+鉄欠乏症 (+他に原因がない)
CQ 軽症の鉄欠乏性貧血に鉄補充を行うべきか?
・学童期、青年期
貧血の有無に関わらず鉄欠乏症は認知機能障害を起こしうる。
Pediatrics. 2001;107(6):1381 より
・新生児/乳児/幼児
貧血の有無に関わらず鉄欠乏症は、精神発達障害を起こしうる。
そのため米国小児科学会では、発達への影響を予防するため生後4カ月からの鉄補充を推奨している。
生後6カ月を越えると母乳中の鉄のみでは必要量を満たさず鉄欠乏症になりやすい。しかし、日本では離乳期初期から十分な鉄を摂れる市販の離乳食がない。
日本では、乳児における鉄欠乏性貧血のまとまった報告が少なく、乳児期の鉄欠乏性貧血が無症状で一過性と考えられているため小児科医に関心をもたれていないことが問題である。鉄欠乏症では、鉄補充を推奨する。
小児科臨床. 2014;67(12):121-6 より
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