Case6. 両手指 PIP関節の側面のみ腫脹する17歳(J Pediatr 2021;236:316-317)
【病歴】生来健康な17歳男児。5年前から徐々に、両手指の側面が無症候性に腫脹した。
両手指(親指を除く)の近位指節間関節(PIP関節)の側面に軟部組織の腫脹あり。可動域制限なし。
【質問】診断は何ですか?
A. Knuckle pads
B. Pachydermodactyly
C. 肥厚性皮膚骨膜症
D. 若年性特発性関節炎
答え
A. Knuckle pads(8人, 15%)
B. Pachydermodactyly(18人, 35%)
★若年者のPIP関節の側面腫脹を認める場合は、Pachydermodactylyを念頭に置き、手指への機械刺激の有無を含めた生活歴の問診が重要
C. 肥厚性皮膚骨膜症(12人, 23%)
D. 若年性特発性関節炎(14人, 27%)
Pachydermodactylyとは
- 近位指節間(PIP)関節の背側および側面に、無症候性の腫脹を起こす良性線維腫症
- 1975年にVervovに報告されて以降、日本では2021年時点で17例が報告されている
- 『認知度が低い』ため診断にいたらない、と考えられている。
- 若年者の、両指示・中指・環指のPIP関節側面に、びまん性の腫脹をきたし、疼痛や掻痒感を伴わないことが特徴
- 男女比は約4:1で、発症年齢の中央値は16歳と若い。
- 5%に家族歴あり
- 関節周囲の皮膚の過度の反復的な機械的刺激により、関節周囲組織が肥厚して起こる
分類
- classic (複数の関節に生じる)
- localized (単一間接に限局)
- transgredient (MP関節にも生じる)
- familial (家族歴あり)
- associated with tuberous sclerosis(結節性硬化症の合併例)
関連が指摘さている要因
検査や予後
画像検査:骨や関節の異常なし、関節周囲の軟部組織肥厚のみ
- 病理:膠原繊維の増殖が最も一般的。過角化と表皮肥厚を、多くで認める
- 予後は、原因回避による自然改善から、経過観察で変化しない例まで様々
鑑別疾患
Pachydermodactylyの、主な鑑別な疾患は下記
- 炎症性関節炎:若年性特発性関節炎や関節リウマチ(朝のこわばり、関節痛、可動域制限)
- ナックルパッド(手指背側の腫脹)
- 肥厚性皮膚骨膜症(皮膚肥厚とばち指)
- へバーデン結節
細かい鑑別は下記
治療
生活指導が主。指の機械的刺激を回避する。
【参考文献】
上記で不足している情報を下記より補足・引用した。