朝活研修医(総合診療科、小児科)

九州で総合診療科・小児科をしながら地域中核病院で勤務する研修医のブログ

腸重積の整復(空気整復)と院内プロトコル

当院は長年勤務している年配の小児科医師1名、1-2年周期で交代する若手医師1名の2名体制です。

が、腸重積のプロトコルもなく、腸重積例には若手に『やってみて!』といって、ご自身は透視室の外で特にお手伝いすることもなく・・・しかも教育のためとかでもないです。

若手が整復に難渋していても、本当に手伝うことがないような環境です。そして、整復方法は、インターネット上にも、あまり記載してくれていないです。

自分が移動になった時、医師5年目未満の若手小児科医師が赴任させられた時を想像すると、酷すぎるので院内プロトコルを作成しました。(ま!プロトコルは年配医師にみせても、ほとんど見てくれなかったので、結局、信頼する他院の年配の先生に査収してもらったんですけどね!)。

当院は人手がないので、手技中の超音波担当者の確保が難しく、空気整復を行うことにします。また、腸重積の物品セットを作成して常備することにします。

使用するカテーテルですが、尿道用カテは細くて空気が漏れやすいので、コスト!コスト!と言わずに、ちゃんと肛門用カテーテルを買ってほしいです。

当院は、肛門用カテがないので、尿道用カテを代用しています。なんとか整復できるものの・・・空気が漏れやすく やりにくいです。

 

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空気整復の物品

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処置図

【空気整復の準備】

・モニターの準備、酸素マスクの準備、便培養の準備、輸液ルート:細胞外液

・鎮静:患児の意識状態の把握が困難となるため、原則 使用しない

 

【空気整復の手順】

① 小児科外来処置室の棚にある「腸重積症セット」を持参して透視室へ行く

スタッフは医師の他に2名(看護師1名と、できれば上級医がいることが望ましい)

② モニターを装着し酸素マスクの準備をする。透視台に防水シーツを敷き、その上に児を寝かせ、物品を並べる

③ 上半身まで衣類を上げ、腹部を観察しやすいようにし、オムツを開いて臀部の下に敷く。体格に合わせ、挿入可能なできるだけ大きいバルーンカテーテルを選

④ 空気が漏れないようにカテーテル挿入・固定する成功のためには、空気が漏れない工夫が大事

 1.バルーンの根元から約1㎝部分を持ち、1㎝程度 挿入する

 2.バルーンを膨らませ、軽くチューブを引き、肛門倫に固定する

 3.チューブの根元を大腿の皮膚に固定する

 4.両脇の臀部を引き寄せ、肛門のチューブを挟んで、交差するように固定する

 5.膝や大腿を弾性包帯で固定する

 6.(可能なら空気が漏れにくいように)介助者1名が、両手で、お尻を肛門側に力をいれ、加圧中は、外力も用いて肛門を閉める

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⑥ 透視を行い腹部全域が撮影できる位置を決める

撮影ポイントは整復前、先進部(カニ爪サイン)、整復終了後の最低3枚は撮影する

⑦ 圧力計を見ながら60mmHgから徐々に上げていく。途中で数回撮影しながら進行具合を確認する。最高圧は120mmHgまでとする(高圧での加圧は1回3分まで、放射線照射時間は可能な限り短く、最大でも10-15分以下が望ましい)

最高圧120mmHgを3回試みて、無理なら高次医療機関へ連絡する

⑧ 整復できたか評価する

  1. 重積の消失、2. 空気の回腸への逆流、3. 空気で拡張した回腸、
  2. 整復後に嵌入した腸管がない

⑨ Y字管前をペアンで挟んでから、腸内ガスを抜き終了する。排便があれば便検査を行う。以上で終了する。

 

*ガストログラフィン整復は、こちらのスライド28ページが参考になります。

www.slideshare.net

小児と成人の高カリウム血症の診断と治療管理②(検査と治療の総論)

【結論】

●日本国内の薬品名、保険記載の投与量などを勘案

 ⇒高K血症の検査・治療方法を下記にまとめた。使用は自己責任で・・・

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高K血症の治療

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高K血症の検査フローチャート

上記が大切なすべて。

不足分は、

drtasu.hatenadiary.jp

も参考。

 

下記からは参考文献からの引用で上記と一部重複する。

GFRおよびアルドステロン値に基づくアルゴリズム

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上記に従い原因検索を遂行。

緊急性の評価:バイタル測定、K値、心電図

鑑別のための情報:問診、eGFR、血ガス、逸脱酵素(ASTやLDH・CKなど)、尿中K、尿中Cre、レニン、アルドステロン

TTKG(尿浸透圧、血清浸透圧:Up to dateで最近は意味ないと記載 出すかは上級医と相談)

Pediatr Nephrol  2011 Mar; 26(3): 377–384. より

 

偽性高カリウム血症

明白な誘因がない場合に考慮する。溶血(毛細血管サンプリングなど)、白血球増加症、血小板増加症、採血管へのEDTA-2K混入、未分離血液の長期保存 で生じる

 

カリウム血症の検査

検査

鑑別診断

血球数

溶血性貧血、HUS、血小板増加症、感染症

血液ガス

アシドーシス

浸透圧

TTKG計算

Cre、BUN

腎不全

CK

横紋筋融解症

ALT

溶血、腫瘍崩壊

LDH

溶血、腫瘍崩壊

Glu、HbA1c

糖尿病

レニン、アルドステロン、アンギオテンシン

低レニン血性低アルドステロン、偽性アルドステロン症

血中コルチゾール

先天性副腎過形成

11βOH/21OH/17OHプロゲステロン

尿中K、Na、Cre

塩類漏出

尿中Alb

タンパク尿

TTKG

腎応答正常なら高K血症で高い(通常> 10)

高K血症時の不適切な低TTKGは

低アルドステロン症または腎尿細管欠損を示唆

 

カリウム血症の管理

Step1:原因評価、ECGモニタリング

 重度の高K血症またはECG変化があればICU入室

10%グルコン酸Ca投与(禁忌:ジゴキシン中毒、高カルシウム血症

 

Step2カリウム上昇の原因を排除

 薬剤、サプリメント、K含有量の多い食事を中止

 

Step3:細胞外空間へのカリウムシフト増加治療

 GI療法 電解質とGluモニタリングが必要

低血糖に注意し血糖値:10-15 mmol / lに維持を目指す

 β刺激薬 サルブタモールの低下効果は2時間後に1.6-1.7 mmol / lの平均減少。高カリウム血症を伴う非小児期早期腎における直腸カチオン交換樹脂よりも安全であり優れていることが示されている。

 

Step4カリウム排泄量を増加させる

 ループ利尿薬 腎機能残存例に用いる

 イオン交換樹脂 1-2時間後に効果発現、4-6時間持続する

 腎代替療法

 

治療薬剤について:

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参考文献:

・Up to date「Causes, Clinical manifestions, and evaluation of Hyperkalemia in Children」

・Pathogenesis, diagnosis and management of hyperkalemia. Pediatr Nephrol  2011 Mar; 26(3): 377–384.

・内科救急診療指針2016

小児と成人のコロナウイルス感染まとめ(小児と成人の比較、川崎病様のコロナ感染)

  【今日の内容】

●l小児と成人におけるCOVID-19の特徴を整理する

●COVIDー19の検査適応を知る

●MIS-C(川崎病様コロナ)を知る

●COVID-19の小児例は

  呼吸器障害以外に、川崎病や心筋障害に注意する

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新型コロナウイルスについて

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新型コロナ感染経路

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新型コロナの臨床経過

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新型コロナの疫学

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新型コロナの症状(小児と成人の比較)

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新型コロナの検査適応

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新型コロナ感染に罹患した患者への説明資料

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新型コロナウイルス小児への薬物治療の考え方(日本小児科学会のものもあるので、みてみてください)

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コロナ感染の検査データ(正直、臨床現場で使える有用な結果はない)

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コロナ治療薬の作用点

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コロナウイルスの病態

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川崎病様のコロナ感染について

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川崎病様のコロナ感染:症状

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まとめ

 

虫垂の描出法

小児虫垂炎の検査制度

診断精度

感度

特異度

エコー

88%

94%

CT

94%

95%

 

Pediatric Appendicitis Score

項目

スコア

咳嗽/打診/跳躍時の右下腹部痛

2

食欲不振

1

発熱(38度以上)

1

嘔気/嘔吐

1

右下腹部の圧痛

2

白血球>10000/µl

1

多核好中球数>7500/µl

1

疼痛部位の移動

1

 

 

虫垂炎の可能性

検査

3点以下

2% 以下

不要

4-6

8-48%

検討

7点以上

78-96%

必須

4点以上で検査考慮、7点以上で検査必須

 

虫垂の解剖

短径≦6mm、長さ 6-10㎝、虫垂の起始は Macburney点、圧迫でつぶれない、蠕動なし、短軸:円形

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参考動画:

https://www.youtube.com/watch?v=-pElyV8KUjU

How to identify appendicitis with the help of ultrasound imaging. 1分30秒から

 

Nuck管水腫

Nuck管水腫

・女性の腹膜鞘状突起は、子宮円索とともに鼠径管を通過し大陰唇にいたるが、生後1年で完全に閉鎖する

・閉鎖せず残存した鼠径管内の鞘状突起は、Nuck管といわれる

・Nuck管内に漿液が貯留し水腫となった状態をNuck管水腫(嚢胞)という

・腹腔内と交通があるものと交通がないものに分類され、交通性は小児例に多く、非交通性は成人例に多い

【疫学】

・小児期の発生頻度は全出生数の0.1%と推定され稀である。成人での頻度は不明である。

【症状】

・無痛性の鼠径部腫瘤として触知される

・疼痛を認めた報告はあるが、Nuck管水腫で疼痛を生じる原因は不明

【鑑別】

鼠径ヘルニア、脂肪腫、粘液腫、平滑筋腫、肉腫などの腫瘍、嚢胞、膿瘍,リンパ管疾患、子宮内膜症、非還納性卵巣ヘルニア

【検査】

超音波検査:子宮円靱帯の走行と一致する内部が無エコーの嚢胞性腫瘤、comma-shaped lesion with its tail directed toward the inguinal canal(鼡径管に尾側を向けるコンマ型の腫瘤)

CT:低吸収の嚢胞状病変

MRI:T2強調画像において内部は均一な高信号を呈し、内部の均一な漿液性成分

【治療】

通常、生後1年以内に閉鎖するため、1歳まで経過観察し、それ以降に治癒しない場合、手術を行うことが一般的である。腹膜鞘状突起の高位結紮術+水腫吸引が行われる。

緊急手術になることはないが、急速に出現し軽い痛みを伴う場合があり、血行障害を伴った非還納性卵巣ヘルニアとの鑑別が重要である

 

Nuck管水腫の本邦報告55例の検討

年齢

1-79歳

左右

右30例, 左21例, 両側1例

部位

鼠径部35例, 外陰部5例

症状

膨隆40例, 疼痛11例

合併症

鼠経ヘルニア4例, 子宮内膜症3例, 子宮腺筋症1例, 膿瘍1例

術前診断

Nuck水腫13例, 鼠経ヘルニア16例, リンパ節炎3例, 嚢胞性腫瘍3例

大きさ

最大4×7㎝, 最小1.3×0.8㎝

治療

切除47例, 高位結紮術1例, 腹腔鏡下の穿刺・吸引1例, 不明1例

澤田ら, IRYO 2008 62(6);347-349

 

Nuck管の図

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Acta Radiologica Open 2019 8(12);1-5より

コロナウイルスにおける科学的なマスクの効果

ウイルス感染における

サージカルマスク着用と、飛沫やエアロゾルのウイルス検出量について

Respiratory virus shedding in exhaled breath and efficacy of face masks.

Nature Medicine 2020. 4. 3 published

https://www.nature.com/articles/s41591-020-0843-2#Tab2

 

結論:サージカルマスクをした場合、コロナウイルス感染者においては、飛沫とエアロゾルでウイルスは検出されなかった。

 

背景:サージカルマスクが、呼吸器感染を起こすウイルス伝播を予防する効果があるか、検証する

 

方法:コロナウイルス新型コロナウイルスではなく、通常のコロナウイルス)、インフルエンザウイルス、もしくはライノウイルス(風邪の原因で一番多いウイルス)に感染した246人の呼気サンプルを採取した。

マスクをしない群(122人)とマスクをする群(124人)の2つに分け、30分間、呼気を採取し、直径5μM以上の飛沫と、それ未満のエアロゾルに分け、それぞれのウイルス量を測定した。

 

結果:

コロナウイルス

マスクをしている場合、ウイルスが検出されなかった(図を参照)。

マスクなしの場合、飛沫は30%、エアロゾルは40%にウイルスが検出された

(インフルエンザウイルス)

マスクをしている場合、飛沫は4%、エアロゾルは1/3でウイルス検出された

マスクなしの場合、飛沫は26%、エアロゾルは35%にウイルスが検出された

(ライノウイルス)

マスクの有無にかかわらず、飛沫とエアロゾルで同等にウイルスが検出された

 

まろめると・・・

・マスクをした場合、コロナウイルス感染者においては、飛沫とエアロゾルでウイルスは検出されなかった。インフルエンザ感染者の飛沫のおいてもマスク着用群ではウイルスが検出されなかった。しかし、インフルエンザ感染者のエアロゾル、ライノウイルス感染者の飛沫やエアロゾルにおいては、マスクの効果は認められなかった。

・マスクをしていない場合、各ウイルスに感染した患者の約1/3で飛沫やエアロゾルでウイルスが検出された

 

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コロナウイルスのマスク着用におけるウイルス量の評価

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インフルエンザとライノウイルスにおけるマスク着用によるウイルス量の評価

 

小児における新型コロナウイルス(COVID19)の臨床的特徴や症状、成人との比較

COVID-19小児例の臨床的特徴

Lancet Infect Dis. Published online March 25,2020. 

https://www.thelancet.com/journals/laninf/article/PIIS1473-3099(20)30198-5/fulltext

 

背景

2020年1月17日から3月1日までの間に、寧波と温州(中国、浙江省)で661例のCOVID-19が報告され、うち小児例(0-16歳)は36人(5%)であった。36例の陳勝的特徴を報告する。診断は上咽頭ぬぐい液のRT-PCRを用いた。

 

結語

CTで肺炎像があった19人、無症候性や上気道炎の17人を比較した。

肺炎を有する症例は、リンパ球減少、高体温、プロカルシトニン高値、D-dimer高値、CK-MB高値が見られた。

 

重症度は下記で定義

軽症

Mild

中等症

Moderate

重症

Severe

致死的

Critical

上気道症状のみ

軽症の肺炎

肺炎+重症所見

呼吸窮迫

低酸素血症

意識障害なし

心筋障害

肝機能異常

DIC

横紋筋融解など

呼吸補助を要する敗血症性ショック

ICU要す臓器障害

 

 

○重症度別のコロナウイルス感染による臨床症状

 

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感染経路

32人(89%)が両親からの伝番感染

12人(33%)が流行地区への曝露

重症度

軽症(17人、47%)、うち無症状は7人(14%)

中等症(19人、53%)

重症や致死的例なし

症状

37度以上の発熱(36%)、乾性咳(19%)、咽頭痛(6%)、嘔吐と下痢(6%)、多呼吸(3%)、咽頭発赤(3%)

検査

肺炎を有すると、有意にリンパ球減少・高体温・PCT高値・Dダイマー高値・CK-MB高値 が見られた

 

○小児と成人の臨床症状の比較

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成人と比較し小児は、症状が軽い

リンパ球・白血球減少、心筋酵素上昇の有病率は同じ

            小児  成人

発熱     36%  86%

咳      19%  62%

肺炎       53%  95%

CRP上昇     3%  49%

重症例     0%  23%