高熱がでると精子が死ぬのか?影響を考える。
最近、コロナウイルスが流行しているせいか『高熱がでると精子が死ぬのか?』外来や入院患者さんからの質問が増えました。患者さんからの質問には、できる限りEvidence(論文!)をもとに答えるように努めます。
結論から先に
死なない
正確にいえば、発熱後の約3か月は、一過性に精子の量・機能が低下する。
根拠となる論文
『発熱疾患にかかった健常男性の精子について』検討した複数の論文があります。
精子が成熟するまで
射精に至るまでに、精子は、4つの段階に分けられて成熟します。
それぞれの段階で、必要な日数は概ね決まっています。
①分裂増殖期:57-80日
②減数分裂期:33-56日
③精子形成期:9-32日
④精子成熟:0-8日
射精に至るまでに(精子が成熟するまで)、平均すると約2-3か月がかかります。
上記の文献で引用されている文献では、精子の成熟(射精)までに約80日要するとしています。
発熱が精子に与える影響
健康な男性の、発熱前後で、精液サンプルのデータがどのように変わるか調べた論文です。症例報告ですが、グラフが見やすいので提示します。
健康な男性で発熱するときは、ほとんどが『風邪』なので、この文献は、『風邪』で発熱したときに、精液が受ける影響について調べていると考えてよいと思います。
この文献では『発熱の前・後で、精液の数・運動性・生存率の変化』を調べました。
結果
発熱後79日以降は、少なくとも『精子の総精子数・運動性・生存率』に影響はない!
- 総精子数
発熱後15~58日目は有意に減少した。79日目後までに正常に戻る。
- 運動性
発熱後15~37日目に有意に減少した。58日後までに正常に戻る。
- 生存率
統計的に有意ではなかったが、発熱後15日後にわずかに減少した。
そもそも精子の成熟に約80日(約3か月)かかるため、解熱した後から発熱の影響を受けない精子が作られ始め、3か月後に成熟した精子となるため、『発熱後79日以降』に『精子の数や機能に影響がながなかった』という結果は、ある程度、納得のいく結論だと思います。