PFAPA症候群(概念、原因、臨床像、診断)
Periodic fever with aphthous stomatitis, pharyngitis, and adenitis (PFAPA syndrome)
概念や疫学
PFAPA症候群は、周期的発熱、アフタ性口内炎、頸部リンパ節炎、咽頭炎・扁桃炎を随伴し、そのほかにも頭痛や腹痛、関節痛などを合併しうる。周期性発熱症候群の中で、最も頻度が高い。正確な頻度は見逃されている症例も多く分かっていない。
私見:当院は病床が約200床の総合病院で、小児患者が年間7500人程度であるが、2-3年に1人の頻度でPFAPAが発見されているように感じる。
原因
自然免疫にかかわるサイトカイン調節異常が示唆されている。遺伝性は示されていないが、家族内発症はほとんどみられないという報告から3割程度にみられるという報告まで幅がある。家族性症例は、多くが常染色体優性遺伝を示す。ただし、全エクソームシーケンシングによる家族性症例のゲノム解析を行ったが、PFAPAの単一共通遺伝子における変異は検出されてない。なお、PFAPA患者は原則、家族性地中海熱遺伝子(MEFV)、メバロン酸キナーゼ(MVK)、 TNFRSF1A、NLRP3など、他の周期性発熱症候群の疾患にみられる遺伝子変異は検出されない(遺伝子変異を持つ場合、難治性の傾向があった など症例報告が少数ある)。
発症のトリガーは自然免疫の異常応答と考えられ、発熱時には血清中の IL‒ 1bやTNFαなどの pro‒inflammatory cytokines が上昇する。これに引き続き,Type 1 immune response が誘導され、全身性の炎症が起こると推測されている。扁桃摘出術の有効率が高いことから、扁桃になんからの病因がある可能性が考えられている。
臨床像
2~6日間の39℃ 以上の発熱を3~8 週ごと(平均4週)に比較的規則的にくり返す。
まお、村田らの論文3)の既報紹介では、最大14日まで発熱期間が生じている。
定期的な発熱は、1-4歳(原則5歳以下の乳幼児)で出現し、10歳までに自然軽快する。しかし、成人まで定期的な発熱が続き、成人期に診断される例も存在する。塚平らは、小児期に発症し30年以上の経過の後に診断に至った症例を報告している2)。
間欠期は無症状で、発症後、4~8年程度で後遺症なく自然治癒し、成長や精神・運動発達も正常である。時間の経過とともに、発作時の重症度は低下し、発熱回数や発熱期間も減少する。成人まで症状が持続する症例は、発熱回数が低く、発熱期間が短い傾向がみられる。診断する際は、臨床経過の詳細な把握とほかの周期性熱疾患の除外によりなされる。通常、Thomas らや Padeh らにより提唱された基準を用いることが多い3)。自己炎症性疾患診療ガイドライン2017ではThomasの基準を、診断基準として採用している。
PFAPA症候群は家族性地中海熱にみられるような激しい腹痛や胸背部痛、間接症状はなく、他の自己免疫疾患でみられることが多い筋関節痛や皮疹がない2)。
PFAPA:105人の臨床的特徴4)
咽頭炎85%、頚部リンパ節腫脹62%、頭痛42%、口内炎38%、軽度の腹痛41%、嘔吐27%
(加えてUp to dateのPeriodic fever with aphthous stomatitis, pharyngitis, and adenitis には、関節痛:11-42%で、下痢・咳・鼻炎・発疹は報告がほとんどない。成人は小児より胸痛、頭痛、関節痛、筋肉痛、眼症状、発疹の頻度が小児より高かった と記載あり。)
105例における3大症状の繰り返す頻度
Not present |
Sometimes present (発熱発作時の50%未満) |
Usually present (発熱発作時の50%以上) |
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62% |
17% |
21% |
|
15% |
24% |
61% |
|
頚部リンパ腫脹 |
38% |
16% |
46% |
Thomasの診断基準(Thomas KT, et al. Periodic fever syndrome in children. J Pediatr 1999;135:15-21)
Padehの診断基準(Pwdeth S, et al. Auto-inflammatory fever syndromes. Rheum Dis Clin North Am. 2007;33:585-623.)
- 毎月の発熱~規則的に反復する発熱、年齢問わない
- アフタ性口内炎がみられることがある
- 頚部リンパ節炎
- 滲出性扁桃炎があり咽頭培養院生
- エピソード間欠期は完全に症状がない
- 副腎皮質ステロイド1回投与で迅速に反応する
なお、診断するためのフローチャートが自己免疫性疾患ガイドライン2017(自己炎症性疾患診療ガイドライン2017 | Mindsガイドラインライブラリ)や、自己免疫性疾患サイト(自己炎症性疾患サイト [Autoinflammatory Disease Web Site])から出されている。
鑑別は、川崎病や悪性疾患、自己免疫疾患、周期性好中球減少症を含めた免疫不全の除外が必要である。特に、白血病/悪性リンパ腫や、FMF、A20ハプロ不全症などは病初期に特徴的な症状うや検査所見を認めず、PFAPAと区別できないことがある。
重要な鑑別疾患のまとめは下記の文献が分かりやすくまとめている。
PFAPAの診断と治療. 村田卓士ら, Jpn J Clin Immuol. 2007:30(2):101-107より引用
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsci/30/2/30_2_101/_article/-char/ja
参考文献:
1)自己免疫性疾患診療ガイドライン2017
2)塚原 晃弘ら, 小児期に発症し30年以上の経過の後に診断に至ったPFAPA症候群の1例. アレルギー 2020;69(1):53-58
3)村田 卓士ら, PFAPAの診断と治療. Jpn J Clin Immunol. 2007;30(2):101-107.
4)Feder, H, et al. A clinical review of 105 patients with PFAPA. Acta Pædiatrica 2010;99: 178-184.