小児総合診療医のひとりごと

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日本における溶連菌感染後関節炎とリウマチ熱の特徴の違い

A retrospective study: Acute rheumatic fever and post-streptococcal reactive arthritis in Japan

Allergol Int. 2017;66(4):617-620

 

□PICO

P:急性リウマチ熱(ARF)および連鎖球菌反応性関節炎(PSRA)の患者

I:ARF患者44例

C:PRSA患者21例

O:ARFとPSRAの発生率や症状の違い

 

◇試験の概要

デザイン:アンケートを用いたレトロスぺクティブ研究

地域:日本

登録期間:2010年〜2015年

症例数:323病院で診断された65例、(3~15歳のARF群44例、2~15歳のPRSA群21例)

 

◇結果

発症年齢はARFは8.5歳(3-15)歳、PSRAは8.2歳(2-15歳)。2群間で年齢および性別に関して有意差なし。咽頭炎からの潜伏期間は、PSRA患者で優位に短い。

 

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症状・所見

ARF:心臓炎(61.4%)、関節炎(82%)、舞踏病(6.8%)、輪状紅斑(15.9%)、皮下結節(2.3%)

PSRA:関節炎(100%)、皮下結節(4.8%)、心臓炎・舞踏病・輪状紅斑なし。

ARFではPRSAと比較し、心炎症例・CRP値・ASOが優位に高い。血沈には有意差がない。

膝、足首、手、肘、股関節の関節炎は、指の小関節を除き頻度に差がない。

ARF患者の指関節炎は、PSRA患者よりも有意に少ない。ARF患者では移動性関節炎が優位に多い。

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急性期治療

ARF患者(95.5%)とPSRA患者(81%)の両方で抗生物質療法の初期治療が頻繁に使用。

ARF患者:アスピリン19/44人(43.2%)、イブプロフェン5/44(11.4%)、ナプロキセン3/44(6.8%)

PRSA患者:アスピリンは4/21(19%イブプロフェン5/21(23.8%)、ナプロキセン4/21(19%)

コルチコステロイドは、ARFでより高頻度。

2か月以上持続した関節炎は、ARF患者の方がPSRA患者よりも頻度が低かった(0%対28.6%)。f:id:drtasu0805:20180118214951p:plain

議論

PSRAはGAS感染エピソードの平均7日後に発生、ARFはGAS感染エピソードの平均20.5日後に発生した。

PSRAがARFと異なる疾患かという問題は答えが出ていないが、治療に関しての違いは、二次予防が推奨されるかどうかである。ARFとPSRAとを区別する診断基準がないため、PSRAと診断された患者はARFを有する可能性があるという懸念がある。この研究では、PSRA症例に心炎は認めなかった。

他文献でPastore らはPSRAを含む心臓炎の無症候例を同定するために、心エコー検査がARFを疑う全症例でRutineに実施するべきであると報告している。