ファイザー製のコロナワクチン接種後の心筋炎
Pfizer-BioNTech COVID-19 ワクチンを投与し、心筋炎を発症した若年者のまとめ
小児科領域で権威があるPediatricsの文献:Pediatrics September 2021, 148 (3) e2021052478
12歳以上の若年者に接種が始まりましたが、心筋炎/心膜炎の報告が聞かれます。接種説明をする医療者である以上、ワクチン接種後の心筋炎/心膜炎がいつ、どのような経過をたどって起こるか、学ぶ必要があります。
論文の要点を先に
- 基礎疾患のない若年者(14-19歳の7人)で、ワクチン接種後に心筋炎/心膜炎が報告されたが、現時点では、因果関係は分からない
- 全症例、重篤化せず予後は良好だった
- ワクチン接種後の心筋炎/心膜炎は、2回目のワクチン接種後4日以内にすべて発症した。
- 全症例で胸痛が発生した。
- ワクチン接種後の早期に、胸痛を伴う場合は、心筋炎を考える
Introduction
米国でのPfizer社製BioNTech COVID-19 mRNAワクチンについて
- 使用許可
2020年12月11日:米国FDAが、16歳以上に使用許可
2021年5月10日:米国FDAが、12歳以上に使用許可
- 有効性16〜55歳:感染予防の有効性:94%〜95%
12〜15歳:感染予防の有効性:100%
- 副反応:全身性の副反応は、特に若年者で2回目のワクチン投与後に発生しやすい。
ワクチン接種後2日以内に頻繁に発生し、注射部位の痛み、倦怠感、筋肉痛、悪寒、関節痛、発熱、注射部位の腫れや発赤、吐き気、倦怠感、リンパ節腫脹など
- ワクチン投与後の心筋炎/心膜炎:ワクチン先進国のイスラエルで1人/20000人(18-30歳)の頻度で発生し、男性に優位であった。ただし、因果関係は不明。
若年者以外も起こるのか?
起こる。
ヨーロッパから2症例報告されている。
COVID-19の既往のある56歳の男性(Int J Cardiol Heart Vasc. 2021;34:100774)
COVID-19の病歴のない39歳の男性(Rev Esp Cardiol. 2021;27: S1885–S5857(21)00133-X)
症例1 提示
【現病歴】
- 生来健康な16歳男児。
- 2回目のファイザー製BioNTech COVID-19ワクチンを接種した2日後に、発熱・胸痛・倦怠感で救急受診した。
- COVID-19含め最近のウイルス性疾患の罹患歴なし。
- 心電図:ST上昇あり、心エコー:正常
- 血液検査:トロポニンI上昇あり、D-ダイマー:1.52ug/mL、赤沈:43mm/時、CRP:12.3mg/L
- 鼻咽頭のSARS-CoV-2 PCR陰性、血清SARS-CoV-2ヌクレオカプシド抗体:陰性、そのほか網羅的ウイルス検査も陰性だった。
【心臓MRI】心筋炎に特徴的所見あり(心尖部と中隔側壁の心外膜下に、造影遅延相で造影効果あり)
【治療後の経過】
集中治療室で管理が開始された。IVIG 1.5g/kgを投与し、mPSL:10㎎/㎏を3日連続投与した。経口PSLに移行、12週かけて漸減終了した。入院3週間後に、トロポニンは正常に回復した。後遺症なく退院した。