小児総合診療医のひとりごと

小児科, 総合診療科(家庭医療), アレルギー についてのブログ

ボタン電池誤飲には蜂蜜を飲ませる(CMAJ 2021;193 (38) E1498;)

こどものボタン電池誤飲は増加

  • 1999年から2019年の間に、米国毒物データシステムの解析
  • ボタン電池の年間摂取量は66.7%増加(人口100万人あたり6.98から10.46人)
  • 合併症が10倍増加(0.77%⇒7.53%に増加)
  • ボタン電池は、摂取後2時間以内に組織に重大な損傷を与える危険な異物

ボタン電池を誤飲した場合に、できることは?

蜂蜜またはスクラルファート(胃粘膜保護剤、スクラルファート®, アルサルミン®)を投与する。両者を投与することで、動物実験NA Laryngoscope, 129:49–57, 2019)で、消化管組織における全層損傷の減少効果が判明している。

*このアプローチは、全身麻酔の手術まで、経口摂取を行わないという通常のアプローチとは逆になるが、食道損傷を軽減するメリットが、麻酔時の潜在リスクを上回ると推測される(参考文献より)。

蜂蜜

患者が病院に到着する前に投与する。消化管の組織障害を軽減する効果がある。

1歳以上の子供に、10分毎に1回10mLを投与する(最大6回まで投与可)

1歳未満には、乳児ボツリヌスのリスクがあるため投与不可

スクラルファート

入院中に投与する。バッテリー摂取から12時間以内にスクラルファートの投与を開始し、除去術などによる摘出を待つ。スクラルファートは、10分毎に1gを投与する(最大3回投与)

*蜂蜜を5-10ml1回投与し、蜂蜜またはスクラルファート500mgを1回投与する報告もある(参考文献)

ボタン電池誤飲の合併症

  • 摂取したバッテリーの種類とサイズが、合併症を起こすかに影響
  • リチウム電池と20 mm以上の電池(食道停留の可能性大)が最も危険、特に6歳未満
  • 食道の損傷は、摂取後2時間で見られることがあり、8-12時間で深刻な損傷を起こす

  • 合併症:胃腸穿孔、大動脈食道瘻と狭窄 (その他)気管食道瘻、声帯麻痺、大動脈弓穿孔、縦隔炎、脊椎椎間板炎、誤嚥性肺炎

電池誤飲について

  • 検査:胸部/腹部Xpの前後/側面

ボタン電池は二層構造であるため、X線で二重リング状に見え、コインと区別が可能(参考文献より)

  • 緊急摘出が必要かは、電池の現在位置によって決まる。

位置が食道⇒内視鏡ですぐに除去

位置が下部食道接合部より遠位⇒年齢と電池サイズで方針が変わる

5歳未満でサイズ20mm以上 ⇒緊急除去を積極的に推奨する。

②上記以外は症例ごとに除去するか除去を行う専門家が検討。

  • 除去しない場合は、画像検査を繰り返す(有症状時、20 mmを超える場合は48時間、20 mm未満の場合は10〜14日)

ボタン電池の除去後

消化管の狭窄・瘻孔や、食道狭窄は、電池誤飲の後期合併症で、除去後の数週間から数ヶ月後も起こりえる

そのため、胃腸出血や嘔吐などの消化管症状がないか監視させ、有症状時は評価する必要がある。

 

【参考文献】Poorな部分は下記から追加した

Up to date, Button and cylindrical battery ingestion: Clinical features, diagnosis, and

initial management. UpToDate, Post TW (Ed), UpToDate, Waltham, MA.(Accessed on October 07, 2021.)