Basedow病で『眼球突出』はなぜ起こるか?
Basedow病で『眼球突出』はなぜ起こるか?
Basedow病眼症では後眼窩組織におけるTSH受容体の発現が増強していることが報告されている。
Basedow病眼症ではTSH受容体に対する自己免疫機序により後眼窩組織にもリンパ球浸潤をきたし、炎症がおこる.その結果、後眼窩組織の線維芽細胞は活性化してGAGの産生が高まり間質の浮腫をきたす。
それ以外にMüller筋/上眼瞼挙筋/外眼筋/脂肪組織/涙腺に炎症をきたして眼球突出・上眼瞼後退・涙液分泌低下などが生じる。続発性には、眼瞼・結膜・角膜・眼球運動・視神経網膜に障害を来たす。重症例では複視や視力低下を来す。また片眼性に症状が出現することもある。
追加して:
Basedow病眼症(甲状腺眼症)はBasedow病患者の25~50%,慢性甲状腺炎患者の2%にみられる。
眼症患者の20% はBasedow病の既往のない甲状腺機能正常者(euthyroid Graves’disease)または低下症(hypothyroid Graves’disease)の患者にみられる.
Basedow病眼症は、喫煙との関連が報告されている。タバコの煙に含まれるチオシアネートなどの化学物質が甲状腺の働きを抑えたり、異常な免疫反応をひき起こしたり、低酸素などをおこし後眼窩組織におけるグリコサミノグリカン(GAG)産生を高めるなどの機序が想定されている。
Basedow病眼症の治療指針:
clinical activity score(CAS)
後眼窩の自発痛,上方視,下方視時の痛み,眼瞼発赤,眼瞼腫脹,結膜発赤,結膜浮腫,涙丘腫脹の7 項目からなる活動性スコア。合計3 点以上であれば活動性があると判定し、ステロイド療法や放射線療法などの免疫抑制療法の適応となる。
重症度:
軽症→日常生活に支障が無い
中等症→眼症状により日常生活に深刻な障害をきたし,2 mm以上の眼瞼後退,中等度ないし重度の軟部組織所見,正常より3 mm以上の眼球突出,側視時および常時の複視がみられる場合
軽症→失明のリスクがある場合