蘇生後の低酸素性虚血性脳症の管理
小児昏睡の治療と予後
last updated: Jan 04, 2018.
昏睡:入眠しているようにみえ覚醒せず、環境に対する認識を示さない
治療: 早期診断目標は脳損傷を軽減すること
気道 ⇒十分な換気の確保、気管挿管
循環 ⇒低血圧管理(脳2次損傷に寄与するため積極的に管理する)、静脈内等張液と血管拡張薬
血糖 ⇒低血糖の是正
頭蓋内圧 ⇒頭部CT所見、うっ血乳頭、、ヘルニア兆候に基づき、頭蓋内圧の増加が疑われる場合は緊急治療を推奨する ;ICP低下のための治療は①発熱治療、②ベットアップ30度、③マンニトール
痙攣 ⇒重積状態はロラゼパム0.1㎎/㎏静注、再発防止のためにはフェニトイン15-20㎎/㎏静注
温度管理 ⇒38.5度以上の高熱は脳損傷を助長する。頭蓋内圧上昇をもたらし2次的脳損傷の一因となる可能性がある
電解質異常 ⇒軽度~中等度高Na血症は是正不要。それ以外の電解質異常は治療介入。
予後
・昏睡は通常2-4週間未満の一時的な状態である。
・非外傷性脳障害後3か月以上続く場合/外傷後12ヶ月以上持続する場合は、意識改善の可能性がなく永続的昏睡と判断する。
低酸素性虚血性脳障害;HIE/外傷性脳障害;TBIの予後因子
原則、神経学的回復の可能性はHIEよりTBIでより高い。
臨床的な決定力を持つにいたる純分な予後因子はない。年齢は因子として役立たない。
⇒予後因子として、①Event24時間後の対光反射・運動反応・両側胎生感覚誘発電位が予測性高い。②心肺停止時間;(良好な神経学的予後を有した心停止生存例は)15分以下が31%、15-35分が12%、36分以上が10%である。
24時間後のGCS<5と24時間自発呼吸がない症例は重度の障害/死亡の陽性予測率が100%であった。(ただし感度は50%であるため見逃す可能性がある)
その他の予後不良因子:痙攣、低酸素症、早期低血圧など。高乳酸アシドーシス、多臓器障害(急性腎障害、肝障害)は死亡リスクと神経学的予後不良の因子。溺水患者は比較的予後良好が多い。
脳波について
昏睡状態の予後予測因子であるが、鎮静剤は脳波異常を引き起こすため予後推定の評価を困難にする。昏睡小児の予後に脳波検査を用いた研究は限定されている。
脳波検査を行う利点は、非てんかん性重積状態(nonconvulsive status epilepticus、NCSE)を特定しうる点である。
SEP(体性誘発感覚電位)は高い特異性があり、特にHIEで脳波検査より予後予測に有用である。
頭部MRIについて
頭部CTより詳細に障害部位を描出可能で、予後予測の定性評価に有用である。
last updated:April 21,2015.
臨床的評価項目
・自発運動、刺激への反応、瞳孔系と反射、角膜眼球反射、自発性呼吸の有無
HIEの予後予測に有用な臨床スコアとして、Event 48時間以内のGCS≦4、24h後の角膜・対光反射、24hまたは72hの運動反応 がない場合は予後不良(重度神経学的後遺症や死亡)が起こりうる。
特に、心停止後3日目に角膜・対光反射がないと予後は不良。
・低体温療法中、肝不全・腎不全・ショック・鎮静薬投与は、不良転帰の臨床基準推測を不正確にする。
・ミオクローヌスてんかん状態は、予後不良因子である。重度の脳虚血・脳幹脊髄損傷と関連している。
・24-72hの体性誘発電位が予後不良予測に最も有用。N20成分がないと不良。
・脳波検査の、臨床的価値は不明。鎮静・筋弛緩薬で臨床的に抑制されるてんかん重積状態を評価するために有用でありうる。
・頭部CT:通常、心肺停止直後は正常だが、3日目までに脳浮腫・皮髄境界不明瞭化を呈する。