多型紅斑(多型滲出性紅斑)の治療
多型紅斑の治療
up to dateより
Davidら、last update: Jul 20, 2017.
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一般事項:
多型紅斑は、皮膚上に特徴的な標的様病変の出現を特徴とする急性免疫介在性疾患である
病変は、時に口腔・生殖器・眼の粘膜を含むびらん・水疱を伴う
Erythema multiforme major:粘膜病変を伴う多型紅斑を指す
Erythema multiforme minor:粘膜病変のない多型紅斑を指す
一般的には感染によって誘発され、単純ヘルペスウイルス(HSV)が最もCommonである
重大な後遺症なしに数週間で改善する。少例は年経過で再発しうる。粘膜関与を有する多型紅斑とSJSは異なる疾患である
病因別
多型紅斑の重症度または持続時間に対する感染症の急性治療の効果に関するデータはほとんどない
HSV感染の発生後平均して8日目に現れHSV感染治療が必要ない時期に発生する⇒HSV関連多型紅斑の出現後の経口抗ウイルス剤による治療が、発疹の臨床経過に影響を与えないことを示唆している
マイコプラズマ・ニューモニエ:
感染原因の治療が粘膜皮膚病変の持続期間または重症度に及ぼす影響についての研究はない
一般的に、治療は活動感染症の管理のために実施する
薬剤:
新規薬剤に起因すると考えられる場合、中止する。
急性期治療
急性治療は、疾患の重篤度に応じて変わる。
軽度なら、疼痛や掻痒感の軽減を目的とした治療で十分である。
全身性グルココルチコイド療法は、重度の口腔粘膜病変を有する患者に考慮すべきである。
重度の粘膜病変を有する衰弱した多型紅斑患者にのみ経口ステロイドの短期投与を推奨する
通常開始用量は、40~60㎎/日のプレドニゾンを2〜4週間で徐々に漸減する
軽度:
皮膚病変のみ、または口腔粘膜病変が限局する場合
管理は症状の緩和を行い、皮膚灼熱間や掻痒感に局所コルチコステロイド、経口抗ヒスタミン剤を用いる
痛みを伴う口腔内びらんは、リドカイン、ジフェンヒドラミン、制酸薬の混合物を含む高効能の局所コルチコステロイドゲルおよびうがい薬で治療する
重度:広範囲の口腔粘膜病変を有する場合
重度の疼痛で、経口摂取できないことがある。
全身性グルココルチコイドは、症状の重症度を低下させ、疾患の経過を短縮させる試みにおいて、しばしば使用されるが質の高いEvidenceはない。
(再発性経口多型紅斑を有する11人の患者に、経口プレドニゾン(最初は40〜60mg /日、その後は2〜3週間にわたり漸減)が唯一有効な治療であった。
しかしながら、グルココルチコイドが疾患活性を部分的に抑制するだけであり、疾患の慢性化および発作の持続期間のリスクを増加させる可能性があるという懸念を表明している研究者もいる。
眼病変:
長期の後遺症を予防するため、眼科医に直ちに紹介する
SJSでは、ステロイド点眼剤が推奨されている。潤滑点眼剤(非保存ヒアルロン酸やカルメロース点眼剤など)の使用も重要である
予後不良因子:
以下の特徴は、再発する患者の疾患制御予後が好ましくない
- 特定の原因を特定できない
- 継続的な抗ウイルス療法による改善しない
- 重度口腔病変
- グルココルチコイド療法の約1年間の使用
- 2つ以上の免疫抑制剤の使用歴
再発性EMの予防治療:
年6回以上の再発例、衰弱した多型紅斑のエピソードを有する例:全身性の予防療法の候補者である。抗ウイルス薬で改善しない患者には、免疫抑制療法または免疫調節療法が用いられる。
抗ウイルス剤の選択
再発性EMの初期治療は、以下のレジメン1つを6か月間行うことを推奨する
- アシクロビル- 1日2回400 mg
- バラシクロビル- 1日2回500 mg
- ファムシクロビル- 1日2回500mg
抗ウイルス剤によって治療に対する反応が異なる可能性がある。
⇒バラシクロビルが寛解誘導する可能性が高いことを示唆されている
(ただし、アシクロビルおよびファムシクロビルよりもバラシクロビルの優位性示すのに十分なEvidenceはない:アシクロビル療法失敗後のバラシクロビル誘発性多型紅斑が寛解した症例報告や、バラシクロビルを含む多数の治療法に失敗したヘルペス関連多型紅斑がファムシクロビル投与;500mg 1日1〜3回で完全寛解した報告がある。)