小児総合診療医のひとりごと

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啼泣はエアロゾル発生、感染リスクの増加につながるか?

結論:大声で話すことでさえ、エアロゾルが発生・放出されることが分かっている。

同様の原理で、泣き叫ぶ小児は、エアロゾルを生成・放出するはずである。感染リスクを増加させる証拠は今のところない。

(啼泣によるエアロゾル発生・感染リスクを科学的に証明した文献はなかった。しかし、原理を考えると啼泣はエアロゾルを発生させる。と警鐘を鳴らしている論文はある。

 

啼泣とエアロゾルについて触れている論文は検索できたものは下記のみ。今後のEvidence蓄積が望まれる。

 

Does a Crying Child Enhance the Risk for COVID-19 Transmission?

Indian Pediatr. 2020; 57(6): 586–587.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7340728/

論文の訳:

日常的な小児科外来診療で、COVID以外の症例(呼吸器症状のない発熱児)に対し、適切な手指衛生と手袋・サージカルマスクの装着が推奨される。ただし、エアロゾル発生処置(AGP)では、N95マスクと追加の個人保護具(PPE)が推奨される。エアロゾルは、気体中に浮遊する微小な液体または固体の粒子と周囲の気体の混合体で、エアロゾルの程度は様々だが、くしゃみ、咳、会話、通常の呼吸でも発生する。

AGPは、医療従事者がさらされるSARS-COV-2を含めた急性呼吸器感染の原因となるエアロゾルや飛沫を生成すると考えられている。AGPは医療処置を実施したときに生成される(例えば、挿管、用手換気、非侵襲的換気、気管切開)。ただし、感染リスクが、直接的な空中伝播によるものか、呼吸器飛沫への二次暴露かどうか、はっきりしていない。

 

大声で話すことでさえ、エアロゾルが発生・放出されることが分かっている。

泣き叫ぶ小児においても、同様の原理でエアロゾルが生成・放出されるはずである。

ただし、啼泣とエアロゾル生成増加による感染リスクへの影響は、現在まで証明されていない。

 

パンデミックの状況下で、3点ほど医療者は熟考する必要がある。

  • 定期予防接種や非呼吸器系の主訴で来院する乳幼児でさえ、無症候性の保菌者・感染者の可能性がある。乳幼児はマスク着用や社会的距離による感染対策が難しい。
  • の年齢層でよくみられる啼泣も、エアロゾルの発生と伝播のリスクを高める。
  • 不安や恐怖による持続的な泣き声と共に子供が、介護者や付き添い者に近づくことで、エアロゾルによる感染リスクをさらに増加させる可能性がある。