胆道気腫と門脈内ガスの区別
区別のポイント
胆道気腫
- 胆道系の処置後に生じるものが臨床的によく遭遇し、多くは病的意義が乏しい。
- 臨床的に注意を要するのは、胆のう炎の合併症として生じる胆嚢消化管瘻孔である。この場合、消化管内に移動した胆石による胆石イレウスを生じることが多く、胆管気腫の存在自体が胆石イレウスの診断に重要な手掛かりとなる。
- 感染兆候を呈する患者に胆道気腫を認める場合は、気腫性胆管炎の可能性が考えられるが、この場合は臨床的に極めて重篤な症状を呈することが多い。
門脈内ガス
- 門脈内ガスは『特定の疾患』ではなく、急性腹症の『診断の手がかり』となる所見
- 門脈内ガスは消化管に責任病変が存在するため、胃や腸間膜静脈の異常なAirを含めて責任病変を検索することも必要である。
- 1955年にWolfとEvansが最初に報告し、重篤な消化管疾患により静脈から門脈にかけてAirを生じる稀な病態と考えられていたが、診断機器の高性能化に伴い、軽症例の報告も増えている。
- 重力と血流の影響を受けるため、肝左葉の腹側に分布することが多く門脈血流に乗って肝辺縁2cm以内まで達する。
- 原因は
①虚血・潰瘍などによる腸管の粘膜障害部位からの腸管内ガスの移行
②腸閉塞など腸管内圧の上昇
③胃壁内気腫,胆管気腫 があげられる
- 腸管壊死などの見逃してはいけない病態が隠れている一方で、保存的加療が可能な腸炎や良性の気腫などでも生じるため、病歴や腹部所見、乳酸アシドーシス、生化学検査(CKやLDH)などの変化と併せて判断する。
- 症状に乏しい場合は、良性の気腫や内視鏡検査後が考えられ、病歴や胃・腸管壁のAirを確認する。症状を有す場合は、最も重篤な腸管虚血の可能性を念頭に置きつつ、腸管壁の浮腫・高吸収域・非薄化や腸間膜の浮腫を確認し、必要であれば造影を撮影する。
【参考文献】
①Q3. 画像診断. 胆道気腫と門脈内ガスの区別とそれぞれの意味するところを教えてください. 臨床画像 2021 Vol.41 No.4 増刊号 S18-S19.