小児総合診療医のひとりごと

小児科, 総合診療科(家庭医療), アレルギー についてのブログ

小児における市中C. difficile感染症

 Risk Factors for Community-Associated Clostridium difficile Infection in Children

J Pediatr 2017;186:105-9

 

小児入院患者でCDIは増加し、死亡率の増加や入院期間の延長・入院費用の増加を招いている。近年では成人および小児において市中感染が増加してきている。現在では全CDI症例のうち1/3が市中CDI(Community-associated Clostridium difficile Infection:CA-CDI)である。CA-CDIの小児例ではPPIの使用と経腸栄養器具の使用が関連していると既報がある。

 

【目的】小児の市中クロストリジウム・ディフィシル感染症(CA-CDI)に関連する投薬および他の要因の特徴を示す。

【研究デザイン】米国の軍事保健システムデータベースの記録を用いて症例対照研究を行った。CA-CDI症例には、2001年から2013年までの外来患者のCDIを有する1歳〜18歳の子供が含まれた。過去12週間の薬剤曝露、最近の外来受診、1歳未満の兄弟姉妹への接触CDIを有する家族との接触の有無を評価した。

方法:

1歳未満の小児は、頻繁に腸内にC difficileが常在化するため除外した。

以前入院中にCDIと診断した患者も除外した。12週間のうち、外来受診、1歳未満の兄弟姉妹の有無、CDIの診断を受けた家族に曝露したことを評価した。

【結果】対象群3993人とCA-CDIを有する1331人を比較した。

CA-CDI症例および対照の年齢中央値は7.0歳(3.3-13.4)であった。

症例は男性(50.3%)と女性(49.7%)で均等であった。

CA-CDIを有する1331人が複数の抗生剤に暴露されていた。うち795人(59.7%)は、CDI診断前12週間以内に抗生物質暴露があったが、40.3%には先行する抗生物質曝露はなかった。

CA-CDIの診断前12週間以内に抗生物質曝露を有した795人の小児のうち、319人(40.1%)は複数の抗生剤曝露を認めた。252人(31.6%)が2種類、68人(8.6%)が3種類以上の抗生剤暴露であった。

抗生物質処方後のCA-CDI発症までの中央値は33日(17-54日)であった。

図:小児市中CDIの傾向

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小児CA-CDI例は、12年間で47.9%の平均年間増加( P<.001)であった。

表:先行する抗生剤投与数によるC.difficileの感染率

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暴露された薬剤が多いほど、CA-CDIは増加する。

表:市中C. difficile発症にかかわる暴露因子の比較

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表:市中C. difficile発症にかかわる暴露因子の調整Odds比(Adjusted OR)

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・クリンダマイシン、第3世代セファロスポリン、フルオロキノロン(CA-CDI群51例、対象群0でOdds算出はできなかった)は関連が高いと考えられる。

・注目すべきは、プロトンポンプ阻害剤(OR 8.17)曝露後のCA-CDIのオッズが、抗生物質クラスの曝露に匹敵している。

・最近の外来受診はCDI発症に関連し、受診のたびに35%ずつOddsが増加する(OR 1.35)

CDIを有する家族との接触はCA-CDIと関連していた(CA-CDI群8症例、対象群0例)

・1歳未満の家族に対する接触はCA-CDIと関連しなかった(OR 0.83)

 

【結論】CA-CDIは、外来処方薬と、外来受診、CDI家族への接触 に関連している。

 

 

孫引き文献:Clostridium difficile infections in infants and children.

Pediatrics. 2013 Jan;131(1):196-200.

【C difficileのキャリア率について】

0-1か月: 約37%、Ⅰ-6か月: 約30%、 6-12か月:約14%、3歳以上はnon-hospitalized adultsと同等(0%~3%)。小児および成人の入院患者におけるキャリア率は、約20%である。

 

(他文献:Role of Clostridium difficile in childhood diarrhea.

Pediatr Infect Dis J. 1995 Jul;14(7):598-603.

0〜12歳の患者のうち、外来患者の2.9%、入院患者の4.6%、および対照の6.6%にCディフィシルが定着していた。)

 

CDIを発症した小児の関連因子は、抗菌薬治療、プロトンポンプ阻害剤の使用、反復浣腸、おむつの使用、長期経鼻胃管挿入、胃瘻および空腸瘻管、基礎腸疾患、胃腸管手術、腎不全、免疫不全があげられる。

C.ddifizileが原因となる臨床症状は、12〜24ヶ月児では稀である。新生児/乳児がClostridium種の毒素に結合して処理する細胞機構を欠いている可能性がある と推測されている。

CDIの検査

1歳未満の小児におけるCディフィシル日常的な検査を避けることが賢明。下痢を伴う1歳から3歳の小児では、CDI検査が考慮されるが、下痢の他原因(特にウイルス性)の検査がまず推奨される。3歳以上の小児は、成人と同様に検査を行うことができる。

偽膜の内視鏡所見および直腸粘膜の発赤は、偽膜性大腸炎を示唆し、任意年齢でCDIを診断するのに十分である。

小児CDIの治療

CDI治療を受けた患者の30%までが、治療を中止した後に再発する。

メトロニダゾールは、2回目の再発(3回目のエピソード)や慢性的な治療(神経毒性の可能性があるため)の治療に使用すべきではなく、バンコマイシン内服が推奨される。

メトロニダゾールは、軽度から中等度の疾患を有する小児および青年の初期治療に選択される。重度患者および経口メトロニダゾールに応答しない患者に、経口バンコマイシンは初期治療として選択される。

経口メトロニダゾール(4回に分けて30mg/kg/日、経口、最大2g/日)

経口バンコマイシン(4回に分けて40mg/kg/日、最大2g/日)

症候性の患者には、手袋を使用し石鹸と水で手を洗う。塩素製品を使用して環境汚染を除去することが重要な管理策である。下痢が解消したら、管理策は解除できる。