小児総合診療医のひとりごと

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多型紅斑/多型滲出性紅斑の病因、鑑別、診断

Erythema Multiforme(多型紅斑)

MICHELE Rら.  Am Fam Physician 2006;74:1883-8.

 

概要

多形紅斑は、感染または薬物に対する過敏反応であると考えられる皮膚状態である

遠位優位の左右対称な多型な紅斑、丘疹、特徴的な「標的病変」からなる

軽度例は後遺症なく改善し、治療を必要としない

再発症例は、アシクロビル投与で加療される。アシクロビルに対する反応がない患者は、より高い経口バイオアベイラビリティの投薬を必要とし、バラシクロビルまたはファムシクロビルに対して応答する可能性がある

抗ウイルス療法にもかかわらず多形紅斑が再発する場合は、さらなる治療のために皮膚科医に紹介するべきである

スティーブンス・ジョンソン症候群[SJS]、中毒性表皮壊死症(TEN)を含め疾患の臨床スペクトルの一部と考えられる

1993年から頻繁に引用される研究からは、

個々の皮膚病変のパターン、②表皮の剥離を伴う体表面積の推定(水疱またはびらん)

に基づく多形性紅斑、SJS、TENの臨床分類が提案されている

多型紅斑の原因

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多型紅斑の鑑別診断

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多型紅斑、SJS、TENの鑑別特徴

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病因と病態生理

多形性紅斑は、20歳から40歳の成人で発生するが、全年齢の患者で発症しうる

単純ヘルペスウイルス(HSV)は、最も一般的な病因で、症例の50%以上を占める

マイコプラズマ肺炎・真菌感染症は、小児で一般的な病因である

多形性紅斑に関連した薬は、ほとんどがバルビツール酸塩、ヒダントイン、非ステロイド性抗炎症薬、ペニシリン、フェノチアジン、スルホンアミドである

ワクチン(ジフテリア破傷風に関連した多形性紅斑が報告、B型肝炎天然痘)、他のウイルス(水痘帯状疱疹C型肝炎サイトメガロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス) 、および新しい薬(カンデサルタンシレキセチル、ロフェコキシブ、メトホルミン、アダリムマブ、ブプロピオン、シプロフロキサシン

再発性多発性紅斑は、しばしば、HSV-1/2の再活性化に続発する。HSVは臨床的症状がないことがある。臨床的に明らかなHSV感染を伴わずに、多形性紅斑または多形性紅斑のエピソードを伴わずに、臨床的に明らかなHSV再活性化を有しうる

ヘルペス関連多形紅斑の病因は十分に研究されており、遅延型過敏症反応と一致している。CD4 +細胞が、ウイルス抗原に反応してIFN-の産生を引き起こし、炎症カスケードを開始する。

薬物関連の多形性紅斑病変は、ヘルペス関連多形性紅斑のように腫瘍壊死因子αが陽性であり、インターフェロンは陽性でないことから、様々な機序が示唆されている。

 

臨床経過

多型紅斑は、通常は軽度または症状を示さないSelf limittingな発疹である。患者は、紅斑に掻痒感や灼熱感を感じることがある。

病変は境界が定められた赤色/ピンク色の斑として始まり、その後丘疹になる。丘疹は徐々に拡大しうる。丘疹/斑の中央部分は徐々に暗赤色/茶色/紫色になる。病変部の中央は、痂皮や水疱が生じうる。

特徴的な「標的病変」は、規則的な丸い形と3つの同心円のゾーンからなる(中央が暗赤色、淡ピンク色/浮腫性域、周辺の赤色リング)。

標的病変はその名紅斑「多」、種々の臨床形態の病変は、通常、存在する場合、数日発症後まで明らかではないかもしれない

多紅斑の皮膚病変は、通常、遠位末端に対称的に現れ、近位に進行する(手の背側、四肢伸側が最も特徴的)

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粘膜病変が生じることがあるが、通常は口腔に限定される

多形性紅斑は、後遺症なしに3〜5週間で自発的に消失するが再発することがある。再発する患者は、1年に複数のエピソードを起こす可能性がある(再発性多発性紅斑を有する65人の患者を対象とした研究において、1年当たりの平均発作数は6であり2〜24の範囲であった。Br J Dermatol 1993;128:542-5 より)

 

Diagnosis

多形紅斑は臨床的に診断される。

生検所見は多形性紅斑に固有のものではないため、臨床像が明確である場合は皮膚生検が必要ない。

非定型例や再発性多形性紅斑(HSV感染がない)は、生検は他の診断を除外するために役立つ。

 

検査(例:HSV-1/2のIgM/IgG)は、HSV感染を確認できるが、必須でない。

皮膚生検の結果は、臨床形態および病変の存続期間ならびに検体が得られる病変の領域(すなわち、中央部分または外側領域)によって変化する。

赤色斑および丘疹の初期段階は、血管周囲の単核細胞浸潤を示す。

標的病変の浮腫性領域の生検では、組織学的に顕著な皮膚浮腫を示すことがある。壊死ケラチノサイトまたは表皮の変化は、通常、標的病変の中央部分で起こる。

多型紅斑の鑑別診断は、薬疹、多型光発疹、蕁麻疹、蕁麻疹様血管炎、ウイルスexanthems、および他の過敏性反応を含ちま。

多形紅斑は、多くが発症時に蕁麻疹に似ているので、臨床的特徴を区別することが重要。

 

典型的な症例における多形性紅斑の個々の病変は、少なくとも1週間存在し、固定/標的病変に進行するものもある。

 

対照的に、蕁麻疹病変は、24時間以内に同じ部位に存在する/病変の中心は、正常または境界のように赤く見える。

標的病変がバラ色粃糖疹、エリテマトーデス、血管炎、figurate Erythemas(回状紅斑)に類似し得る。水疱性病変が存在する場合、多形性紅斑は自己免疫性水疱性疾患と区別されなければならない。

 

Treatment

多紅紅斑の管理は、可能であれば病因を決定することを含む。

疑わしい感染症を治療する、または 被疑薬を中止することである。

軽度の多形紅斑は治療を必要としない。

経口抗ヒスタミン薬および局所ステロイドを使用して、症状を緩和することができる。

最近または既存のHSV感染を有する患者において、経口アシクロビルによる早期治療は、皮膚病変の数および持続時間を減少させることができる。(局所アシクロビルは、ヘルペス関連多形性紅斑には効果がない)

プレドニゾン:40-80㎎/日を1〜2週間投与しで早急に漸減する。

(使用には議論がある。ヘルペス関連多形紅斑を有する患者では、PSLがHSV耐性を低下させHSV感染が再発し多発性紅斑を再発させる可能性がある)

再発性多発性紅斑は、HSV因子がないとしても、経口アシクロビル(1日2回400mg)で治療する。経口アシクロビルは、多発性紅斑の再発抑制に有効であることが示されている。

バラシクロビル(1日500~1000mg)およびファムシクロビル(1日125~250mg)は、アシクロビルより経口バイオアベイラビリティが高く、アシクロビルに対する反応がない患者で試みる。患者は4か月の間再発がない場合に、最終的に薬剤を中止することができる。

抗ウイルス療法の使用にもかかわらず、再発性多形紅斑を有する患者は、さらなる治療のために皮膚科医に紹介すべきである。

その場合は、抗マラリア薬、アザチオプリン(イムラン; 1日あたり100〜150mg)、シクロスポリン(サンディミュン)、サリドマイド(サロミド)などの効果が報告されている。これらの薬物療法は一部患者に有益だが、支持する根拠は限定的である。