アレルギー疾患療養指導士の勉強会③(鶏卵アレルギーについて)
*卵ボーロは小麦ではなく、主にでんぷんを混ぜている。したがって、卵ボーロは小麦を混ぜることによる抗原性の低下がない。
アレルギー疾患療養指導士の勉強会①(アレルギー総論)
私の勤務する県は、特に小児アレルギー診療に関わる医師が大変少ない状況です(片手で数えられるレベル)。院内のコメディカルスタッフにアレルギーに興味を持ってもらえるように、1年かけてアレルギー疾患療養指導士を育成します。院内勉強会を2週に1回のペースで行う予定で、主に看護師・栄養士が院内勉強会のメンバーです。
低身長の診断フローチャート
低身長の評価など、まとめ
胆道気腫と門脈内ガスの区別
区別のポイント
胆道気腫
- 胆道系の処置後に生じるものが臨床的によく遭遇し、多くは病的意義が乏しい。
- 臨床的に注意を要するのは、胆のう炎の合併症として生じる胆嚢消化管瘻孔である。この場合、消化管内に移動した胆石による胆石イレウスを生じることが多く、胆管気腫の存在自体が胆石イレウスの診断に重要な手掛かりとなる。
- 感染兆候を呈する患者に胆道気腫を認める場合は、気腫性胆管炎の可能性が考えられるが、この場合は臨床的に極めて重篤な症状を呈することが多い。
門脈内ガス
- 門脈内ガスは『特定の疾患』ではなく、急性腹症の『診断の手がかり』となる所見
- 門脈内ガスは消化管に責任病変が存在するため、胃や腸間膜静脈の異常なAirを含めて責任病変を検索することも必要である。
- 1955年にWolfとEvansが最初に報告し、重篤な消化管疾患により静脈から門脈にかけてAirを生じる稀な病態と考えられていたが、診断機器の高性能化に伴い、軽症例の報告も増えている。
- 重力と血流の影響を受けるため、肝左葉の腹側に分布することが多く門脈血流に乗って肝辺縁2cm以内まで達する。
- 原因は
①虚血・潰瘍などによる腸管の粘膜障害部位からの腸管内ガスの移行
②腸閉塞など腸管内圧の上昇
③胃壁内気腫,胆管気腫 があげられる
- 腸管壊死などの見逃してはいけない病態が隠れている一方で、保存的加療が可能な腸炎や良性の気腫などでも生じるため、病歴や腹部所見、乳酸アシドーシス、生化学検査(CKやLDH)などの変化と併せて判断する。
- 症状に乏しい場合は、良性の気腫や内視鏡検査後が考えられ、病歴や胃・腸管壁のAirを確認する。症状を有す場合は、最も重篤な腸管虚血の可能性を念頭に置きつつ、腸管壁の浮腫・高吸収域・非薄化や腸間膜の浮腫を確認し、必要であれば造影を撮影する。
【参考文献】
①Q3. 画像診断. 胆道気腫と門脈内ガスの区別とそれぞれの意味するところを教えてください. 臨床画像 2021 Vol.41 No.4 増刊号 S18-S19.
ヘアーターニケット症候群(特徴や機序などについて)
- ヘアーターニケット症候群は、体毛や糸が小児の手指や足趾に絡まることで絞扼を呈す病態。2006年時点で、海外は200件以上が報告されているが、国内の認知度は低く、検索しえた限り2021年時点でも国内報告は数例にとどまる。
- 急性虚血による組織壊死を起こしうるため、早期診断と速やかな絞扼解除が必要である
- 絞扼部位:足趾、手指、陰核や陰唇、陰茎が多い。そのほかに、舌や口蓋垂などの報告がある
- 年齢により絞扼部位に特徴がある
⇒乳児:手指・足趾に多い。学童期から思春期は会陰部に多い。
原因
- 産後女性の約9割に出産後のホルモン分泌変化による脱毛が一過性(通常2-6か月)に生じる。この現象がヘアーターニケット症候群に関係している。乳児は、抜けた母親の体毛による絞扼が、手足・足趾に好発する。
- その他に、体毛を蓄積させやすい性質の衣類(ミトンや靴下など)や、乳児の足底反射によりターニケット症候群が起きやすい
-
学童期・思春期は、二次性徴による陰唇や陰核・陰茎の形状変化と、やわらかい陰毛の性状が組み合わさって、陰部のターニケット症候群を起こしやすくする
- 絞扼物が強く巻かれたとき、保護者による絞扼部位の発見が難しい
- 多くが偶発的に起きるが、遊びで自己で巻いた場合や、虐待もありうる
国内症例
乳幼児では、患者自身が絞扼による痛みを訴えることができないため、『泣き止まない』もしくは『不機嫌』が唯一の症状となりうる
国内報告は、おおむね海外報告と一致している。海外では高齢者や陰茎絞扼の症例報告がある。
また、海外のヘアーターニケット症候群210例のReviewでは、切断が必要であった症例も報告されている。
手指切断(4例)、足趾切断(2例)、陰核完全切断(1例)、陰茎完全切断(4例)
手指の壊疽(5例)、手指の軟部組織欠損(3例)
治療
- Beanらは迅速な診断によって患者の90%以上が観血的処置が不要と報告している。
- 剪刀による切断、皮膚埋没例は側正中から数mm程度の皮膚切開を行い、皮膚と共に絞扼物の切断が必要となりうる
- 解除できない場合は、全身麻酔下での切除もありうる
まとめ
- 疾患認知度が低いため、医療者は『ヘアーターニケット症候群』という疾患概念を知っておくこと
- 乳児は足趾・手指、学童以降は会陰部のターニケット症候群が起きやすい
- 乳児の四肢が腫れている場合、『糸や毛』で絞扼してないか『しっかり』診ること
- 通常、早期受診で後遺症なく解除が可能
- 日本の症例報告は、海外症例の特徴と一致してはいるが、国内報告が少なすぎるので、より多くの症例蓄積が望ましい
参考文献:
Case8. 眼球エコーの重要性. 左眼痛と複視を認める15歳([Ann Emerg Med. 2021;78:567)
15歳の少年が、左眼痛と複視で受診した。痛みは眼球運動で悪化する。
眼球エコーで左眼(A):0.4mmの視神経乳頭隆起、5.4mmの視神経鞘径の拡大あり。右眼(B)は正常だった。
診断は?
視神経炎
眼底検査で左視神経乳頭浮腫、MRI T2 / FLAIR高信号の異常肥厚あり。
患者は、メチルプレドニゾロン静脈内投与を5日投与し、眼痛と複視は改善した。
- 視神経炎は、視神経の炎症性脱髄障害で。単独または多発性硬化症や視神経脊髄炎など、他疾患とともに発生しうる
- 眼球エコーは、①視神経乳頭の隆起、②視神経鞘の拡大 で検出可能。
- 1-15歳は、4.5mmを超える視神経鞘の拡大は異常と見なされる。
- 小児の視神経乳頭隆起の基準値は報告がないされていない。
- 非対称の視神経乳頭の隆起・視神経鞘の拡大は、正常眼球と比較することが重要で、視神経炎の診断に有効である
眼球エコー
眼球エコーの疾患別の所見まとめ
Case7. 5年前から緩徐に増大する頭皮腫瘤 17歳男性(Am Fam Physician. 2021 Oct ;104(4):413-414.)
Growing Mass in an Adolescent - Photo Quiz - American Family Physician
11歳時に、頭皮のしこりに気づき、緩徐に増大した。出血や痛みはない。掻痒感あり。
17歳時、ポリープ状で14mm×12mmの腫瘤を主訴に受診した。
問題
次のうちどれが最も可能性の高い診断でれか?
A. Acrochordon(軟性線維種)
B. Compound nevus
C. Dermal nevus
D. Junctional nevus
続きを読むラムネ瓶による舌外傷
夏祭りでよく販売されている『ラムネ』
症例は、こどもがラムネ瓶の中の空気を吸い込んで、瓶の中を陰圧にして、瓶の口に舌を入れて遊んでいたところ抜けなくなったという事例です。
個人的に、コップやプリン・ゼリーのカップの中の空気を吸い、口につけたまま陰圧にして、顔に円形の出血斑で受診された症例を経験したことがある。また、ラムネ瓶に関しては、舌外傷以外に、中に入っている『ビー玉』を取ろうとして、足で踏み砕き、靴を貫通して足底を受傷した症例の経験があります。
経験した事例を事故予防につなげる
日常生活の中で、「こんな事故が起こるのか」とびっくりする事例が発生しています。
小児科学会は、同様の事故予防につなげるために、傷害の情報収集を行い『傷害速報』として発表しています。
現在、だれでも、日本小児科学会のHPから、こどもの事故報告を行うことが可能です。
傷害速報を参考に、各自が考え、事故予防となる対策を講じることが大切です。
同様の事故予防のために、どのような状況で窒息しかけたか、可能であれば、事故報告を行いましょう。
ラムネ瓶による舌外傷
どのように医療者は対応するか
このような症例の対応方法は、当然、教科書には載っていないため、想像力を働かせて、個々の症例で試行錯誤する能力が求められます。また、事前に報告された症例を踏まえて、自身ならどう対応するか、イメージすることが大切だと思います。
事故予防につなげるために
このような事例を経験した場合は、
①親は迅速に病院に受診(どんどん舌の浮腫が強くなって抜けなくなるため)。
②医療者は、早く舌を抜くために想像力を働かせる。
③瓶の構造に改善点があれば変更する
ことが重要だと思います。
気管支軟化症(診断基準や重症度、合併症について)
主に、
『ERS statement on tracheomalacia and bronchomalacia in children.
European Respiratory Journal 2019 54: 1900382』から抜粋
【参考文献】
- 主にEuropean Respiratory Journal 2019 54: 1900382
- 小児耳鼻咽喉科 2017;38(3):282-290
- Tracheomalacia and tracheobronchomalacia in adults. In: UpToDate, Post TW (Ed), UpToDate, Waltham, MA. (Accessed on Octobar 12, 2021.)
- 日本呼吸器外科学会誌 2002;16(4):602-606