朝活研修医(総合診療科、小児科)

温泉県で総合診療科・小児科をしながら地域中核病院で勤務する研修医のブログ

虫垂の描出法

小児虫垂炎の検査制度

診断精度

感度

特異度

エコー

88%

94%

CT

94%

95%

 

Pediatric Appendicitis Score

項目

スコア

咳嗽/打診/跳躍時の右下腹部痛

2

食欲不振

1

発熱(38度以上)

1

嘔気/嘔吐

1

右下腹部の圧痛

2

白血球>10000/µl

1

多核好中球数>7500/µl

1

疼痛部位の移動

1

 

 

虫垂炎の可能性

検査

3点以下

2% 以下

不要

4-6

8-48%

検討

7点以上

78-96%

必須

4点以上で検査考慮、7点以上で検査必須

 

虫垂の解剖

短径≦6mm、長さ 6-10㎝、虫垂の起始は Macburney点、圧迫でつぶれない、蠕動なし、短軸:円形

f:id:drtasu0805:20200626112121p:plain

f:id:drtasu0805:20200626113104p:plain

f:id:drtasu0805:20200626113149p:plain

f:id:drtasu0805:20200626113219p:plain

参考動画:

https://www.youtube.com/watch?v=-pElyV8KUjU

How to identify appendicitis with the help of ultrasound imaging. 1分30秒から

 

Nuck管水腫

Nuck管水腫

・女性の腹膜鞘状突起は、子宮円索とともに鼠径管を通過し大陰唇にいたるが、生後1年で完全に閉鎖する

・閉鎖せず残存した鼠径管内の鞘状突起は、Nuck管といわれる

・Nuck管内に漿液が貯留し水腫となった状態をNuck管水腫(嚢胞)という

・腹腔内と交通があるものと交通がないものに分類され、交通性は小児例に多く、非交通性は成人例に多い

【疫学】

・小児期の発生頻度は全出生数の0.1%と推定され稀である。成人での頻度は不明である。

【症状】

・無痛性の鼠径部腫瘤として触知される

・疼痛を認めた報告はあるが、Nuck管水腫で疼痛を生じる原因は不明

【鑑別】

鼠径ヘルニア、脂肪腫、粘液腫、平滑筋腫、肉腫などの腫瘍、嚢胞、膿瘍,リンパ管疾患、子宮内膜症、非還納性卵巣ヘルニア

【検査】

超音波検査:子宮円靱帯の走行と一致する内部が無エコーの嚢胞性腫瘤、comma-shaped lesion with its tail directed toward the inguinal canal(鼡径管に尾側を向けるコンマ型の腫瘤)

CT:低吸収の嚢胞状病変

MRI:T2強調画像において内部は均一な高信号を呈し、内部の均一な漿液性成分

【治療】

通常、生後1年以内に閉鎖するため、1歳まで経過観察し、それ以降に治癒しない場合、手術を行うことが一般的である。腹膜鞘状突起の高位結紮術+水腫吸引が行われる。

緊急手術になることはないが、急速に出現し軽い痛みを伴う場合があり、血行障害を伴った非還納性卵巣ヘルニアとの鑑別が重要である

 

Nuck管水腫の本邦報告55例の検討

年齢

1-79歳

左右

右30例, 左21例, 両側1例

部位

鼠径部35例, 外陰部5例

症状

膨隆40例, 疼痛11例

合併症

鼠経ヘルニア4例, 子宮内膜症3例, 子宮腺筋症1例, 膿瘍1例

術前診断

Nuck水腫13例, 鼠経ヘルニア16例, リンパ節炎3例, 嚢胞性腫瘍3例

大きさ

最大4×7㎝, 最小1.3×0.8㎝

治療

切除47例, 高位結紮術1例, 腹腔鏡下の穿刺・吸引1例, 不明1例

澤田ら, IRYO 2008 62(6);347-349

 

Nuck管の図

f:id:drtasu0805:20200624162021j:plain

Acta Radiologica Open 2019 8(12);1-5より

コロナウイルスにおける科学的なマスクの効果

ウイルス感染における

サージカルマスク着用と、飛沫やエアロゾルのウイルス検出量について

Respiratory virus shedding in exhaled breath and efficacy of face masks.

Nature Medicine 2020. 4. 3 published

https://www.nature.com/articles/s41591-020-0843-2#Tab2

 

結論:サージカルマスクをした場合、コロナウイルス感染者においては、飛沫とエアロゾルでウイルスは検出されなかった。

 

背景:サージカルマスクが、呼吸器感染を起こすウイルス伝播を予防する効果があるか、検証する

 

方法:コロナウイルス新型コロナウイルスではなく、通常のコロナウイルス)、インフルエンザウイルス、もしくはライノウイルス(風邪の原因で一番多いウイルス)に感染した246人の呼気サンプルを採取した。

マスクをしない群(122人)とマスクをする群(124人)の2つに分け、30分間、呼気を採取し、直径5μM以上の飛沫と、それ未満のエアロゾルに分け、それぞれのウイルス量を測定した。

 

結果:

コロナウイルス

マスクをしている場合、ウイルスが検出されなかった(図を参照)。

マスクなしの場合、飛沫は30%、エアロゾルは40%にウイルスが検出された

(インフルエンザウイルス)

マスクをしている場合、飛沫は4%、エアロゾルは1/3でウイルス検出された

マスクなしの場合、飛沫は26%、エアロゾルは35%にウイルスが検出された

(ライノウイルス)

マスクの有無にかかわらず、飛沫とエアロゾルで同等にウイルスが検出された

 

まろめると・・・

・マスクをした場合、コロナウイルス感染者においては、飛沫とエアロゾルでウイルスは検出されなかった。インフルエンザ感染者の飛沫のおいてもマスク着用群ではウイルスが検出されなかった。しかし、インフルエンザ感染者のエアロゾル、ライノウイルス感染者の飛沫やエアロゾルにおいては、マスクの効果は認められなかった。

・マスクをしていない場合、各ウイルスに感染した患者の約1/3で飛沫やエアロゾルでウイルスが検出された

 

f:id:drtasu0805:20200408173147p:plain

コロナウイルスのマスク着用におけるウイルス量の評価

f:id:drtasu0805:20200408173218p:plain

インフルエンザとライノウイルスにおけるマスク着用によるウイルス量の評価

 

小児における新型コロナウイルス(COVID19)の臨床的特徴や症状、成人との比較

COVID-19小児例の臨床的特徴

Lancet Infect Dis. Published online March 25,2020. 

https://www.thelancet.com/journals/laninf/article/PIIS1473-3099(20)30198-5/fulltext

 

背景

2020年1月17日から3月1日までの間に、寧波と温州(中国、浙江省)で661例のCOVID-19が報告され、うち小児例(0-16歳)は36人(5%)であった。36例の陳勝的特徴を報告する。診断は上咽頭ぬぐい液のRT-PCRを用いた。

 

結語

CTで肺炎像があった19人、無症候性や上気道炎の17人を比較した。

肺炎を有する症例は、リンパ球減少、高体温、プロカルシトニン高値、D-dimer高値、CK-MB高値が見られた。

 

重症度は下記で定義

軽症

Mild

中等症

Moderate

重症

Severe

致死的

Critical

上気道症状のみ

軽症の肺炎

肺炎+重症所見

呼吸窮迫

低酸素血症

意識障害なし

心筋障害

肝機能異常

DIC

横紋筋融解など

呼吸補助を要する敗血症性ショック

ICU要す臓器障害

 

 

○重症度別のコロナウイルス感染による臨床症状

 

f:id:drtasu0805:20200403170949p:plain

f:id:drtasu0805:20200403171000p:plain

感染経路

32人(89%)が両親からの伝番感染

12人(33%)が流行地区への曝露

重症度

軽症(17人、47%)、うち無症状は7人(14%)

中等症(19人、53%)

重症や致死的例なし

症状

37度以上の発熱(36%)、乾性咳(19%)、咽頭痛(6%)、嘔吐と下痢(6%)、多呼吸(3%)、咽頭発赤(3%)

検査

肺炎を有すると、有意にリンパ球減少・高体温・PCT高値・Dダイマー高値・CK-MB高値 が見られた

 

○小児と成人の臨床症状の比較

f:id:drtasu0805:20200403171128p:plain

成人と比較し小児は、症状が軽い

リンパ球・白血球減少、心筋酵素上昇の有病率は同じ

            小児  成人

発熱     36%  86%

咳      19%  62%

肺炎       53%  95%

CRP上昇     3%  49%

重症例     0%  23%



 

 

 

 

2143人の小児コロナウイルス感染:中国における疫学的特徴

American Academy of Pediatrics 2020

中国における新型コロナウイルス感染(COVID-19)に罹患した小児例の疫学的特徴

https://pediatrics.aappublications.org/content/pediatrics/early/2020/03/16/peds.2020-0702.full.pdf

 

・2020年2月8日時点で、COVID-19に罹患した小児2143人の疫学的特徴を後方視的に調査した。分析は、中国CDC(疾病予防管理センター)の疫学データを用いた

・小児例は、年齢18歳未満と定義

・確診例は、コロナウイルスPCR検査など咽頭ぬぐい液・血液で証明されたもの

・疑い例は、下記の条件2つ以上満たすもの とした

  • 症状:発熱or 呼吸器症状or消化器症状(下痢、嘔吐、嘔気)or倦怠感
  • 検査:WBCやリンパ球が 正常or減少、CRP上昇
  • 胸部レントゲン異常

 

重症度

無症候性:症状や検査・胸部レントゲン所見がなく、ウイルスが感染のみ証明

Mild(軽症):上気道症状のみ(稀に消化器症状のみ、発熱なし)、聴診異常なし

Moderate(中等症):肺炎と下気道症状あり(稀に無症候性の肺炎あり)、低酸素血症なし

Severe:(重症)無呼吸、低酸素血症(SPO2 92%未満)あり

Critical(致死的):臓器障害により生命が脅かされる場合

(ARDS、呼吸不全、ショック状態、脳炎、心筋障害、心不全、凝固異常、急性腎不全など)

 

 

〇COVID-19の疫学的特徴

f:id:drtasu0805:20200401193439p:plain

・疑い例が1412人(65.9%)、確診例は731人(34.1%)

・平均年齢は7歳、1213人(56.6%)が男児で43.4%が女児 性別に有意差なし

・重症度

94人(4.4%)が無症状、1091人(50.9%)が軽症、831人(38.8%)が中等度、重症または致死的例は125人(5.8%)

・症状出現から診断まで、平均2日

 

〇年齢による重症度の違い

f:id:drtasu0805:20200401193557p:plain

・重症例は、1歳未満の割合が高い(Critical症例のうち1歳未満が53.8%、Severe症例のうち1歳未満が29.5%)

・2143人中、死亡したのは14歳の男児1例(死亡率:約0.05%)

・多くの症例は軽症、重症と致死的例を合わせると小児は5.9%と成人より低い(成人は既報で18.5%)、小児は重症化しにくいと推察されるが死亡例は存在する

 

〇Disccusion

・感染した小児の多くは、COVID-19に罹患した家族や友人と濃厚接触を持っていた

・1歳未満は、1歳以上と比較して、重症と致死的例の頻度が高い(10.6%)

・小児が成人よりも重症化しない理由は不明であるが、下記の機序が考えられた

  • 接触の違い:病原体や体調不良者と接触する機会が少ない
  • ACE2の違い:SARSコロナウイルスはアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)に結合して細胞内に侵入するが、COVID-19はSARSアミノ酸類似性があり、同様の侵入経路が疑われる。小児はACE2の成熟度と機能(結合力など)が低いため、COVID-19に感染しにくい可能性がある
  • 免疫系の違い:冬期にウイルス感染に成人より罹患しやすく、抗体価が高く推移することでウイルス感染に有利に働いている。免疫系が発達途中のため病原体への反応が成人と異なる。

肺高血圧の病態、超音波検査、診断法(+α 新生児遷延性肺高血圧の治療)

肺高血圧症

・成人での肺動脈圧正常値:一般に『収縮期圧30~15mmHg、拡張期圧8~2mmHg、平均圧18~9mmHg』

・肺高血圧の定義:安静時右心カテーテル検査で肺動脈圧の平均値が25mmHg以上

・『収縮期圧で30mmHg以上、平均圧で20mmHg 以上の肺動脈圧』は肺高血圧の可能性を考慮

原発性肺高血圧症の診断を行う場合は、肺動脈平均圧25mmHg 以上、運動時30mmHg 以上を厳密な意味で肺高血圧の診断基準として用いる。

 

肺高血圧症のスクリーニング

心臓超音波検査で行うCheck point

・収縮期肺動脈圧≒収縮期右室圧≒4×(三尖弁閉鎖不全の圧格差)2+右房圧

(推定式は、重度の右室流出路狭窄や肺動脈弁狭窄、高度三尖弁輪拡大では使用不可)

右房圧の推定(新生児では概ね8mmHg)

f:id:drtasu0805:20180824002153p:plain

J Am Soc Echo 2010;23:685-713

 

*三尖弁閉鎖不全と肺高血圧の重症度は必ずしも相関しないため注意が必要

PSAP(収縮期肺動脈圧)と三尖弁閉鎖不全の重症度の関係

f:id:drtasu0805:20180824002135p:plain

Chest 2009;135:115-121

 

・右房・右室の拡大、心室中隔の扁平化

・TAPSE(参戦弁輪収縮期移動距離)の低下(<成人では16㎜未満で右室収縮能低下)

・右室流出路の血流速波形の変化

 肺動脈圧が上昇した場合は、波形ピークが収縮早期に出現する

 Act(駆出開始点から最大流速までの加速時間)/ET(右室駆出時間)が0.3未満で平均肺動脈圧が30mmHg以上と推定される

 高度では収縮中期にNotchを形成しW型の波形を示す

f:id:drtasu0805:20180824002112p:plain

 肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版)では?

f:id:drtasu0805:20180824003711p:plain

 

 

新生児遷延性肺高血圧症(Persistent pulmonary hypertension of the new bon)

様々な原因で廃欠陥抵抗が高くなり、卵円孔や動脈管を介する右-左短絡が出現した病態

(通常、動脈管での短絡は出生後の体循環系圧>肺循環系圧となり左-右or両側性短絡となる)

・PPHNを疑う臨床症状

100%酸素を吸入しても低酸素血症が改善しない

上半身と下半身でSPO2に較差を認める

・診断:

動脈管・卵円孔レベルで右-左短絡を認める

参考所見:三尖弁逆流、動脈管圧格差、肺動脈血流速度の減弱(肺高血圧が高度だと加速後急速に流速が減衰する)

 

鑑別診断:先天性心奇形(特に、総肺静脈還流異常

 

・血行動態:

右心系の後負荷上昇で、静脈血が卵円孔や動脈管を介して左室系になだれ込む。

肺から左心系に還る動脈血が少なく、静脈血が流れ込むため全身が強度のチアノーゼとなる。

シャントが動脈管レベルのみなら、上下肢のSPO2較差が生じる。

f:id:drtasu0805:20180824001953p:plain

・治療)

体血圧の上昇と肺血管の拡張(=肺動脈圧の低下)を目指す。

f:id:drtasu0805:20180824001948p:plain

参考文献:

周産期医学 2015 45;10:1439-1441.

血管医学 2016 17;3:281-290.

小児科診療 2014 77:917-920.

肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版).

錯乱型片頭痛(Acute confusional migraine:ACM)

錯乱型片頭痛(Acute confusional migraine:ACM
臨床脳波 48(10), 609-614, 2006-10より

 

・1970年にGasconらによって最初に報告された。
・典型的な前兆、頭痛とともに錯乱、興奮、言語障害、記名力障害(意識障害)などを一過性に示す頭痛である。
・1987年にPietriniらが臨床的特徴として、以下7点を挙げている。
①患者および家族片頭痛の既往がある
②錯乱状態に伴う片頭痛
③発作中に脳波異常を認める。
④画像・血液検査で異常がない
⑤数日以内に症状が警戒する
⑥脳波異常も24時間以内から数日以内に正常化する
⑦追跡調査でも神経学的所見がない

 

・頭痛・錯乱と同時または以後に視覚症状(視野障害 目が見えない、視力低下、眼痛)を認める(58%)。
・発症年齢の平均値は8.7歳(6~13歳)であったが、一般的に15歳以下の小児に圧倒的に多い。60歳代まで報告はある。
・錯乱と頭痛の持続期間は、30分から24時間で一旦入眠し覚醒すると症状が軽快することが多い。
・頭痛既往(33%)、軽症頭部打撲後(67%)、頭部打撲から発症までの平均時間は90分(20分~3時間に認める。
・脳波所見:後頭部優位の徐派が多い。数日以内に改善する。
・発作時SPECT:後大脳動脈領域の血流低下が認めらたと報告あり(前頭葉皮質の機能障害の存在が示唆され血流障害に起因する可能性がある)