小児総合診療医のひとりごと

小児科, 総合診療科(家庭医療), アレルギー についてのブログ

IgA血管炎の小児と成人の違い

IgA血管炎は、IgAを含む免疫複合体の沈着を伴う全身性の小血管炎で、血小板減少および血液凝固異常を伴わない紫斑性皮疹が出現する。IgAにはIgA1とIgA2の2つあり、その内IgA1のみが関与する。

皮膚症状はPalpable purpura、丘疹、紅斑、膨疹、血管浮腫であり、成人では血疱や潰瘍形成も多くみられる。〔日本皮膚科学会雑誌:127(3). 299-415.2017

 

小児では年間8~20.4人/10万人、成人では1.3人/10万人である。小児IgA血管炎(20歳未満)は、男女比:1.2-1.6であるが、成人の男女比は同等だった。腎疾患のは小児30-40%、成人45-85%で成人に多い。年齢は、2.5歳~88歳まで報告があり、平均年齢は小児:6.89±3.69歳、成人43.5歳±18.6歳だった〔J Korean Med Sci. 2014 Feb;29(2):198-203〕。

 

<15歳未満の年齢分布>〔Asia Pac Allergy. 2014 Jan;4(1):42–47〕

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【原因】〔J Korean Med Sci. 2014 Feb;29(2):198-203

発症は、春と冬に多い。成人は、悪性腫瘍や薬剤によるIgA血管炎の頻度が小児より高い。

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過去に報告された原因〔Pharma Medica.Vol.26 No.5 2008〕

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【小児と成人例の比較】

<小児と成人の症状>〔Pediatr Neonatol. 2009 Aug;50(4):162-8〕

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腹痛と発疹の間隔は1-21日までの範囲(中央値:8.3±5.52日)であった。

血尿の出現は小児で第1週間目33%、2週目67%、成人で2週以内34%、5週以内67%であった。

小児では腹痛が発疹に先行することが多い(腹痛が先:小児 24.6% 成人 4.55%, P<0.05)。

<IgA血管炎のの初発症状>〔Asia Pac Allergy. 2014 Jan;4(1):42–47〕

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<小児と成人の検査結果>〔Pediatr Neonatol. 2009 Aug;50(4):162-8〕

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白血球数は小児例で優位に高い。

 補体低下、IgA上昇、抗核抗体陽性率は成人例で高いようにみえるが、有意差なし。

IgA血管炎の診断にIgA組織沈着を証明する必要があるか?

日本皮膚科学会雑誌:127(3)。299-415.2017より

 

IgA血管炎は、IgA抗体が関与する小型血管炎である。

血小板減少および血液凝固異常を伴わない紫斑性皮疹(100%)が出現する。

皮膚症状は下肢を中心に出現するが、時に体幹や上肢にも出現する。

Palpable purpura、丘疹、紅斑、膨疹、血管浮腫であり、成人では血疱や潰瘍形成も多くみられる。

 

IgA血管炎の診断にIgAの組織沈着を証明する必要があるか?

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EULAR/Presによる小児血管炎分類基準によると、蛍光抗体直接法(direct immunofluorescence;DIF)でIgA沈着の証明を行わなくてもIgA血管炎の診断が可能である。これは、小児血管炎の多くがIgA血管炎であるため、他の小型血管炎の可能性がほとんどないからである。

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一方、初発年齢が21歳以上の成人発症のIgA血管炎の診断には、皮膚あるいは腎のIgA沈着を証明することを推奨する(推奨度:B)

腎生検が全例に施行困難であることを考慮すると皮膚小血管壁のIgA沈着の証明の意義は高い。しかし皮膚DIFは擬陽性と偽陰性が多いことから、その結果判定は慎重になさなければならない。

 

<小児における全身血管炎の頻度>Proceedings of Singapore Healthcare 2012. Vo21.(4). 265-271

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IgA血管炎、次いで川崎病が多い。MPA、Wegener’s granulomatosis、結節性多発動脈炎は少ない。

 

小児における市中C. difficile感染症

 Risk Factors for Community-Associated Clostridium difficile Infection in Children

J Pediatr 2017;186:105-9

 

小児入院患者でCDIは増加し、死亡率の増加や入院期間の延長・入院費用の増加を招いている。近年では成人および小児において市中感染が増加してきている。現在では全CDI症例のうち1/3が市中CDI(Community-associated Clostridium difficile Infection:CA-CDI)である。CA-CDIの小児例ではPPIの使用と経腸栄養器具の使用が関連していると既報がある。

 

【目的】小児の市中クロストリジウム・ディフィシル感染症(CA-CDI)に関連する投薬および他の要因の特徴を示す。

【研究デザイン】米国の軍事保健システムデータベースの記録を用いて症例対照研究を行った。CA-CDI症例には、2001年から2013年までの外来患者のCDIを有する1歳〜18歳の子供が含まれた。過去12週間の薬剤曝露、最近の外来受診、1歳未満の兄弟姉妹への接触CDIを有する家族との接触の有無を評価した。

方法:

1歳未満の小児は、頻繁に腸内にC difficileが常在化するため除外した。

以前入院中にCDIと診断した患者も除外した。12週間のうち、外来受診、1歳未満の兄弟姉妹の有無、CDIの診断を受けた家族に曝露したことを評価した。

【結果】対象群3993人とCA-CDIを有する1331人を比較した。

CA-CDI症例および対照の年齢中央値は7.0歳(3.3-13.4)であった。

症例は男性(50.3%)と女性(49.7%)で均等であった。

CA-CDIを有する1331人が複数の抗生剤に暴露されていた。うち795人(59.7%)は、CDI診断前12週間以内に抗生物質暴露があったが、40.3%には先行する抗生物質曝露はなかった。

CA-CDIの診断前12週間以内に抗生物質曝露を有した795人の小児のうち、319人(40.1%)は複数の抗生剤曝露を認めた。252人(31.6%)が2種類、68人(8.6%)が3種類以上の抗生剤暴露であった。

抗生物質処方後のCA-CDI発症までの中央値は33日(17-54日)であった。

図:小児市中CDIの傾向

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小児CA-CDI例は、12年間で47.9%の平均年間増加( P<.001)であった。

表:先行する抗生剤投与数によるC.difficileの感染率

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暴露された薬剤が多いほど、CA-CDIは増加する。

表:市中C. difficile発症にかかわる暴露因子の比較

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表:市中C. difficile発症にかかわる暴露因子の調整Odds比(Adjusted OR)

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・クリンダマイシン、第3世代セファロスポリン、フルオロキノロン(CA-CDI群51例、対象群0でOdds算出はできなかった)は関連が高いと考えられる。

・注目すべきは、プロトンポンプ阻害剤(OR 8.17)曝露後のCA-CDIのオッズが、抗生物質クラスの曝露に匹敵している。

・最近の外来受診はCDI発症に関連し、受診のたびに35%ずつOddsが増加する(OR 1.35)

CDIを有する家族との接触はCA-CDIと関連していた(CA-CDI群8症例、対象群0例)

・1歳未満の家族に対する接触はCA-CDIと関連しなかった(OR 0.83)

 

【結論】CA-CDIは、外来処方薬と、外来受診、CDI家族への接触 に関連している。

 

 

孫引き文献:Clostridium difficile infections in infants and children.

Pediatrics. 2013 Jan;131(1):196-200.

【C difficileのキャリア率について】

0-1か月: 約37%、Ⅰ-6か月: 約30%、 6-12か月:約14%、3歳以上はnon-hospitalized adultsと同等(0%~3%)。小児および成人の入院患者におけるキャリア率は、約20%である。

 

(他文献:Role of Clostridium difficile in childhood diarrhea.

Pediatr Infect Dis J. 1995 Jul;14(7):598-603.

0〜12歳の患者のうち、外来患者の2.9%、入院患者の4.6%、および対照の6.6%にCディフィシルが定着していた。)

 

CDIを発症した小児の関連因子は、抗菌薬治療、プロトンポンプ阻害剤の使用、反復浣腸、おむつの使用、長期経鼻胃管挿入、胃瘻および空腸瘻管、基礎腸疾患、胃腸管手術、腎不全、免疫不全があげられる。

C.ddifizileが原因となる臨床症状は、12〜24ヶ月児では稀である。新生児/乳児がClostridium種の毒素に結合して処理する細胞機構を欠いている可能性がある と推測されている。

CDIの検査

1歳未満の小児におけるCディフィシル日常的な検査を避けることが賢明。下痢を伴う1歳から3歳の小児では、CDI検査が考慮されるが、下痢の他原因(特にウイルス性)の検査がまず推奨される。3歳以上の小児は、成人と同様に検査を行うことができる。

偽膜の内視鏡所見および直腸粘膜の発赤は、偽膜性大腸炎を示唆し、任意年齢でCDIを診断するのに十分である。

小児CDIの治療

CDI治療を受けた患者の30%までが、治療を中止した後に再発する。

メトロニダゾールは、2回目の再発(3回目のエピソード)や慢性的な治療(神経毒性の可能性があるため)の治療に使用すべきではなく、バンコマイシン内服が推奨される。

メトロニダゾールは、軽度から中等度の疾患を有する小児および青年の初期治療に選択される。重度患者および経口メトロニダゾールに応答しない患者に、経口バンコマイシンは初期治療として選択される。

経口メトロニダゾール(4回に分けて30mg/kg/日、経口、最大2g/日)

経口バンコマイシン(4回に分けて40mg/kg/日、最大2g/日)

症候性の患者には、手袋を使用し石鹸と水で手を洗う。塩素製品を使用して環境汚染を除去することが重要な管理策である。下痢が解消したら、管理策は解除できる。

 

 

抗不整脈の使い方(Ⅰ群薬の入門)

不整脈

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誰も教えてくれなかった 循環器薬の選び方と使い分け(2017/3/30発行)より

Sicilian Gambit分類とVaughan Williams分類の両方を考えると理解しづらいため、まとめ。単純なVaughan Williams分類でまずは理解をすすめる。

 

Ⅰ群薬

使い分けのポイント:

  • 心房性不整脈心室不整脈か?
  • ベース心電図のQRS時間、QT時間は長いか?
  • 副作用は何か?

【分類】

心筋細胞の活動電位の持続時間(QT時間)の作用で分類

  • 活動電位の持続効果
  • チャネルへの結合・解離速度

Naチャネルの主要な作用は活動電位を発生させること。活動電位のごく最初に作用する。

心筋の興奮時の作用:

Naチャネルがひらく→Naチャネルブロッカーが結合する→次の興奮から作用する

(最初の興奮で結合したなチャネルブロッカーが次の興奮まで残ることで、次の興奮の最初にチャネルをブロックできるので作用が発揮される)

 

 

代表薬

① 活動電位持続時間(QT間隔)に対する作用

②チャネルへの月結合・解離の速度

③親和性の高いチャネルの状態

Ⅰa群薬

キニジン

プロカインアミド(アミサリン®)

ジソピラミド(リスモダン®)

ジベンゾリン(シベノール®)

ピルメノール(ピメノール®)

アジマリン(アスペノン®)

延長

中等度

活性状態

Ⅰb群薬

リドカイン(キシロカイン®)

メキシレチン(メキシチール®)

短縮

早い

不活性状態

Ⅰc群薬

フレカイニド(タンボコール®)

プロパフェノン(プロノン®)

ピルシカイニド(サンリズム®)

不変

遅い

活性状態

アプリンジンはⅠb群薬だが、性質がⅠa群薬に近いためⅠa群薬に分類

 

①⇒Ⅰa群薬はQTを延長させる、Ⅰb群薬は短縮、Ⅰc群薬は不変

②⇒結合・解離速度が速いⅠb群薬は、収縮時間が短く拡張期が長い心房筋では拡張時間の間にチャネルから外れてしまうので心房性不整脈には作用せず心室不整脈だけに使用する薬物と考えることができる。Ⅰc群薬は結合解離速度が遅いので、頻脈じゃない洞調時も比較的長い拡張期でもチャネルからかい離しないのでブロック作用を発揮するため、Baseの心電図でQRS時間の延長を示すことがある。

端的に言うと、Ⅰb⇒心室不整脈だけ、ⅠaとⅠc⇒心房・心室不整脈の両方に使用可

③⇒専門的なので割愛

【QRS時間とQT時間】

QRS時間の延長は催不整脈作用に関連する⇒QRS時間が延長している場合はⅠc群薬の使用は避ける

QT時間が延長はTorsade de pointesを起こす⇒QT延長している場合はⅠa群薬の使用は避ける

【副作用】

Ⅰ群薬を選択するときは、どの薬が効きやすいか決めるのは至難。

そのため、副作用が起こりにくい薬を選ぶ ということが多い。

 

心臓副作用:3つが重要

・QT延長に伴うTorsade de pointes ⇒主に、Ⅰa群

・QRS延長に伴うCAST型不整薬 ⇒主に、Ⅰc群

・心機能抑制作用 ⇒Ⅰa群とⅠc群薬、理由は不明だが中でもジソピラミド・フレカイニドで心抑制作用が強い

非心臓作用:4つが重要

Ⅰa群の抗コリン作用

プロカインアミド以外。キニジン;下痢・悪心などの消化器症状、ジソピラミド;尿閉・口渇が多く前立腺肥大症、緑内障は禁忌。

ジソピラミド、シベンゾリンの低血糖

リドカインの神経作用

アプリンジンの肝障害・汎血球減少

 

◎実際の使い分け手順:

心室不整脈では、副作用の少ないⅠb群薬を選択する

心房性不整脈では、Baseの心電図でQRS間隔が長い場合はⅠc群を避けて、Ⅰa群を選択する。QT間隔が長い場合Ⅰa群を避けてⅠc群を選択する。

心不全がある場合は可能ならⅠ群薬を避けて、どうしても使うならジソピラミド、フレカイニド以外を選択する。これらの制約がない場合は、Ⅰ群薬の副作用を考慮して前立腺肥大症や緑内障がある患者には、抗コリン作用がないプロカインアミドかⅠc群、糖尿病患者ではジソピラミド・シベンゾリン以外を選択する。

蛋白尿のアプローチ

蛋白尿へのアプローチ

小児の検尿マニュアル 日本小児腎臓学会編集より

 

Point進行性疾患の発見、全身性(免疫/代謝/内分泌)・腫瘍・感染症・排尿異常の発見

病的蛋白尿:3歳以上では尿蛋白/尿Cre比が0.15g/gCr以上

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 ネフローゼ症候群:高度蛋白尿(夜間蓄尿で40㎎/時/㎡以上)または早朝尿で尿蛋白/Cre比:2g/gCr以上、かつ低Alb血症(Alb:2.5g/dl以下)

確認すべきRed flag sign(専門医へ早急に紹介:f:id:drtasu0805:20170626153017p:plain

  •  問診: 体位性蛋白尿や運動、発熱などによる一過性蛋白尿を除外する

+α 血尿を伴う場合の問診鑑別

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  • 検査:生理的蛋白尿や低分子蛋白尿を除外する

最低限行う検査:

早朝第一尿、来院時随時尿 (尿定性は濃縮・希釈尿の影響を受ける。尿蛋白/尿Creは影響を受けない)、身長、体重、血圧、腹部超音波検査、尿沈渣、尿蛋白/尿Cre、総蛋白、Alb、Cre、BUN、補体、T-chol、尿中β2・α1 ミクログロブリン/尿Cre(尿PH6以下で分解され偽陰性化、10000μg/LはDent病疑い)、CRP、血沈

追加検査:

ASO、IgA、IgG、抗核抗体、シスタチンC、HBs抗原、HCV抗体

  • 鑑別診断:

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  • 検尿異常のフォローと腎生検、専門医への紹介のタイミング

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腎生検の推奨:

  • ネフローゼ発症時に、①1歳未満、②持続血尿、③高血圧、④腎機能低下、⑤低補体血症、⑥腎外症状(発疹、紫斑など)
  • ステロイド抵抗性を示すネフローゼ症候群
  • カルシニューリン阻害薬の長期投与(投与開始2-3年後に腎生検で腎毒性を評価)

早朝第一尿の取り方

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学校検尿のフローチャート

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新生児の頭蓋内出血

 周産期医学 Vol.46 増刊号/ 2016 713-717より

病態:

側脳室周囲に存在する脳室上衣下胚層は、在胎25-26週で最大となり、以降は縮小傾向になる。

在胎32週以前の児では、脳室上衣下胚層に出血を起こした場合に脳室内出血となることが多い。

脳室上衣下胚層は、前脈絡叢動脈、内側線条体動脈、外側線状体動脈が支配し各々が内頸、前大脳、中大脳動脈の終枝で虚血やうっ血を含めた血流変化を受けやすい。

早産児の血管壁はコラーゲンや細胞成分に乏しく破綻しやすくIVHが発症しやすい。

在胎23-28週児の検討ではIVHなしは70.8%だった。

症状・診断:

特異的症状はなく、徐脈、無呼吸、大泉門膨隆、自発運動低下、筋緊張低下、痙攣などで気づく。

迅速性から診断は、頭部超音波検査が第一選択で重症はPapile分類(CT診断)、Volpe分類(頭部超音波検査)で行う。早産児のIVHは日齢3までに80%が起こるため定期的な画像検査を行う。

凝固能:ビタミンK欠乏に対するビタミンK2補充。凝固因子補充を目的としたFFP投与(10ml/㎏/回)

治療:

根本的な治療はない。出血後水頭症が進行する場合は腰椎穿刺、リザーバ留置、脳室腹腔内シャントを検討する。

予後:

IVH全体で死亡率は5-10%、出血後水頭症への進行は5-20%

原因不明の好酸球増加症のアプローチ

原因不明の好酸球増加症のアプローチ

参考文献:Up to date 『Approach to the patient with unexplained eosinophilia』

【病態生理】

好酸球は主に組織に分布する(血液の数百倍の分布)。

標的組織は、皮膚・肺・胃腸管が主であるが、深刻な臓器損傷は心臓・神経で起こる。

末梢好酸球数:1500/μlが臓器障害が起こりやすい臓器障害が起こりやすいと考えられているが、極端な場合を除き(2万/μl以上)、好酸球数は臓器障害のリスクを予測しない。

軽度:500-1500/μl、中等度:1000-5000/μl、高度:5000/μl以上 

J Allergy Clin Immunol.  2010 Jul;126(1):39-44.

好酸球増加症の鑑別は、成人と同様である。

小児と成人の高カリウム血症の診断と治療管理①(総論)

【高カリウム血症の診断と治療管理  総論】

●Point:高K血症の基本事項を確認する 

不足分は、小児の高カリウム血症の

drtasu.hatenadiary.jp

診断と治療管理②(検査と治療の総論)を参考

 

高K血症の定義:原則(検査対象は)、血清カリウムが5.5mmol/lを超える

ただし新生児では基準値が高めとなる

 K基準値:早産児 4-6.5mmol/l、新生児 3.7-5.9mmol/l、乳児 4.1-5.3mmol/l、1歳以上 3.5-5mmol/l

 

原因:

①腎排泄の減少

②過剰な摂取

③細胞内からの漏出

⇒ なので治療は、腎排泄を増加、摂取減少、細胞内へのカリウムシフト増加 する薬剤の投与となる

 

カリウムの排泄

主に腎臓で起こる。腎外排泄のメカニズムは、カリウムの細胞外シフトや胃腸からの漏出(毎日カリウム摂取量の約10%が胃腸管を介して取り除かれる)がある。

糸球体濾過率(GFR)が15ml /分/1.73m 2未満に低下するまで、腎カリウムホメオスタシスを維持可能である。

 

腎臓におけるカリウム調節機構

カリウムは糸球体で濾過され、Henleの近位尿細管およびループ脚でほぼ完全に再吸収される。排泄は主に皮質採集管で起こる。

ろ過されたカリウムの約20%は、Henleの太い上行脚に再吸収される。

 

腎外のカリウム調節機構

細胞内へのカリウムシフトを増加させる:インスリン、アシドーシス、アドレナリン、ノルアドレナリンドーパミン

 カテコラミン機序⇒筋細胞上のβ2レセプターに結合するカテコラミンが細胞へのカリウムシフトを増加させる

インスリン機序⇒肝臓および筋細胞へのカリウム取り込みを増加させる

 

カリウムの摂取目安量

厚生労働省の摂取目安量

 成人の値:男性 2,500 mg/日、女性 2,000 mg/日

 小児は下記:

 0~5 か月:400㎎/日、6~11 か月:700 mg/日、1-5歳は量的な詳細報告がなく目安量の設定が困難

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小児Kの目安量(日本人食事摂取基準2015、厚生労働省より)

カリウムの耐容上限量

 腎機能が正常である限り、過剰摂取になるリスクは低い。したがって、耐容上限量は設定しない。ただし、腎機能が障害されている場合には摂取量に注意する。(厚生労働省食事摂取基準より)

 

一般的なカリウムが豊富な食品

カリウムは、果物、ジャガイモ、豆、および穀物が多い。

 カリウム(K) 1 mEq = 1 mmol ≒ 39 ㎎

食べ物

K含有量mmol

食べ物

K含有量mmol

バナナ(1個85g)

8.6

オレンジジュース(200ml)

7.9

ブルーベリー(100g)

1.9

ミルク(200ml)

7.7

マッシュルーム(75g)

8.1

コカ・コーラ(200ml)

0.1

ブロッコリー(75g)

5.8

ポテトチップス(20g)

5.1

納豆(75g)

3.9

ミルクチョコ(20g)

2.4

タマネギ(75g)

1.5

ホワイトチョコ(20g)

1.8

フライドポテト(150g)

17.7

ワインガム(20g)

1.8

玄米(150g)

2.2

スパゲティ(150g)

2.3

 

カリウム血症の原因

カリウム摂取過剰

①輸血

②K製剤

③ハーブ類など

腎機能や他の調節機構が正常なら、高カリウム血症を生じるために、極めて多量のカリウムが必要となる。腎機能障害(特にGFRが15未満)で起こりやすい

カリウム排泄障害

①薬剤:ACE阻害剤/ARB/スピロノラクトン/エプレレノン/NASIDs/ヘパリン/シクロスポリン/タクトリムス/~ナゾール系の抗真菌薬/ST合剤/ペンタミジン

②急性/慢性腎機能不全(特にGFR<15はカリウム腎排泄の減少をもたらす)

③低アルドステロン症

④偽性低アルドステロン症

⑤先天性副腎過形成(約90%が21-ヒドロキシラーゼ欠損症)

⑥うっ血性心不全

⑦便秘症(カリウムの経腸排泄の減少)

細胞外への漏出:

①薬剤:β遮断薬/ジゴキシン/高浸透圧利尿剤/ST合材/サクシニルコリン/

②アシドーシス

③糖尿病(インスリン低下)

④高浸透圧(高血糖・マンニトール)

⑤組織壊死

⑥周期的四肢麻痺(骨格筋のNaチャネル変異)

 

カリウム血症の診断

カリウム血症の分類:

 軽度(5.5-6.5mmol / l)、中等度(6.5-7.5mmol / l)重度(> 7.5mmol / l)

カリウム血症は症状に関連することはまれ。

時に動悸、吐き気、筋肉痛、または感覚異常を訴える。

血清カリウム> 6.5mmol / lの患者では、心電図検査(ECG)の監視が必須。

検査は体系的で、常に心機能、腎臓および尿路の評価ならびに水分状態および神経学的評価を含むべきである。

 

 

 

参考文献:

・Up to date「Causes, Clinical manifestions, and evaluation of Hyperkalemia in Children」

・Pathogenesis, diagnosis and management of hyperkalemia. Pediatr Nephrol  2011 Mar; 26(3): 377–384.

・内科救急診療指針2016

 

潜在性甲状腺機能低下症に補充療法をすべきか?

潜在性甲状腺機能低下症の治療について

Thyroid Hormone Therapy for Older Adults with Subclinical Hypothyroidism

NEJM.  Apr 3. doi: 10.1056/NEJMoa1603825.

背景:

潜在性甲状腺機能低下症で甲状腺ホルモン補充を行うかは議論されるところである。

 

方法:

二重盲検ランダム化対照試験。 65歳以上の高齢者において、無症候性甲状腺機能低下症に対して甲状腺ホルモン治療を行い有益であるかを検証した。

TSH(サイロトロピン)が4.6~19.99mIU/Lと上昇しfT4(遊離サイロキシン)が基準範囲の65歳以上の患者は737人が対象。368人はレボチロキシン(チラーヂン)内服群とした(50μg/日Or 50㎏未満または冠動脈患既往なら25μg/日 で開始しTSHが0.40~4.59mIU/Lの範囲になるよう調整した)。369人はプラセボ群とした。

1次評価項目は、1年間でのhyroid-Related Quality-of-Life Patient-Reported Outcome

甲状腺機能低下症の症状スコア・倦怠感スコアの変化とした。(これらの指標のスコアはいづれも0~100点で、高スコアほど症状は深刻で、臨床的に意義のある最低差は9ポイントであった。)

 

結果:

平均年齢は74.4歳。53.7%(396人)は女性であった。

ベースラインのTSHの平均値は6.40±2.01mIU/L、1年後、プラセボ群は5.48に減少、レボチロキシン補充群は3.63mIU/Lであった(P<0.001)、またレボチロキシン投与群の中央値は50μg/日であった。

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両群を比較すると、1年後の甲状腺機能低下症の症状スコアと倦怠感スコアに差はなかった。

1年後の甲状腺症状スコアの変化:

投与群 0.2±14.4、プラセボ群 0.2±15.3。群間差は0.0;95%信頼区間-2.0から2.1

1年後の疲労スコアの変化:

投与群3.8±18.4、プラセボ群3.2±17.7。群間差は0.4;95%信頼区間-2.1から2.8

2次評価項目であるQOL(EQ-5Dスコア)、握力、血圧、BMI、腹囲、日常生活動作にも投与群で有意差は認めず有用性は認めなかった。

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重篤な有害事象(心房細動、心不全、骨折、新規発症の骨粗鬆症)の発生率にも差は無かった。
結論:
高齢の無症候性甲状腺機能低下症患者に対するレボチロキシン投与は、明らかな有用性がない。

経口ステロイドの短期内服における副作用

成人の短期間の経口ステロイド内服に伴う有害事象について

 

Short term use of oral corticosteroids and related harms among adults in the United States: population based cohort study

BMJ 2017;357:j1415  (Published 12 April 2017)

 

目的:

経口ステロイドの短期使用における有害事象の頻度を調べる。

デザイン:

前向きコホート試験、症例対照試験

参加者:

2012-2014年にかけて18-64歳の成人を登録。

 

主要アウトカム:

経口ステロイドの短期投与率(30日未満)とした。コルチコステロイド使用者、非使用者における有害事象率。薬物開始後30日以内の有害事象率と31-90日後のリスク。

 

結果:

3年の観察期間内に、1548945人の成人のうち、327452(21.1%)に短期間の経口ステロイド投与を受けた。

最も頻回に使用されてのは、上気道炎・脊髄疾患・アレルギーであった。

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ステロイド処方は様々な専門医により処方された。薬剤開始30日以内では、敗血症(発生率皮5.30、95%C.I 3.80~7.41), 静脈血栓症 (3.33、95%C.I 2.78~3.99), 骨折 (1.87、95%C.I 1.69~2.07)の増加を認め、31-90日に減少した。これらのリスク増加は、プレドニン20mg/日未満でも認めた (発生率比:敗血症 4.02、静脈血栓症 3.61、骨折 1.83、全てP<0.001)。

 

結論:

保険に加入している欧米人の5人に1人が、3年間の観察期間中に、短期間のコルチコステロイドの投与を受け、短期間のステロイド投与(30日未満)は、有害事象のリスク増加に関連していた。

心不全の血管拡張薬の使い分け:硝酸薬かhANPか?

参考文献

・誰も教えてくれなかった 循環器薬の選び方と使い分け(2017/3/30発行)

 →読みやすい  分かりやすい名著

・レジデントノート増刊 Vol.14 No.14
循環器診療の疑問、これで納得!(2012年11月発行)

・レジデントノート 2016年10月号 Vol.18 No.10
心不全の診かた

 

急性心不全では、クリニカルシナリオ(CS)と呼ばれる収縮期血圧を指標とした分類による治療方針が用いられることが多くなり、CSの普及により従来利尿剤を使っていたところを血管拡張薬で加療することも多くなっている。

 

 

血管拡張薬の使い分け(硝酸薬かhANPか?)

主な血管拡張薬は、

硝酸薬(ニトログリセリン)、人遺伝子組み換えANP:hANP(カルペリチド)の2種類。

いずれも細胞内のcGMPを増加することで血管拡張作用を示す

 

血管拡張薬を用いる上で重要な点は以下3点

①前・後負荷:硝酸薬は前負荷>後負荷、hANPは前負荷=後負荷

②利尿作用:硝酸薬はほとんどなし、hANPは顕著にあり

③臓器保護作用:たぶんhANP>硝酸薬

急性心不全では後負荷(動脈系圧上昇)による心拍出量低下が病態形成に重要な影響を与える。利尿・臓器保護作用もカルペリチド(hANP)が優れているため、カルペリチド販売後は心不全の血管拡張薬治療はカルペリチドを第一選択とすることが多い。(実地臨床では、お金がない・院内採用がない・脱水傾向で顕著な利尿を避けたい場合以外カルペリチドを使用することが多い。)

 

なぜ硝酸薬とhANPで前負荷・後負荷に対する作用が異なるのか?

(血管を拡張させるメカニズム)

①前・後負荷:ニトログリセリンは前負荷>後負荷、hANPは前負荷=後負荷 はなぜ?

 

血管平滑筋の緊張は大きく2つの細胞内因子:CaとcGMPで規定される。

Ca:血管平滑筋を収縮、cGMP:血管平滑筋を弛緩 という効果がある。

両薬剤ともにcGMPを増やすことで血管拡張作用を発揮する。

<cGMP:GTPからグアニル酸シクラーゼと呼ぶ酵素(以下、GC)により産生>

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硝酸薬は、静脈中でより多くHb-NOから分離し、NOとなり作用を発揮する

上記の機序で

硝酸薬:静脈で血管拡張作用が強い(前負荷減少)

    動脈で血管拡張作用が弱い(後負荷減少が強くない)

hANP:静脈・動脈に同等に作用する(前・後負荷が減少)

 

hANPでなぜ利尿作用を示すか?

ANP(心房ナトリウム利尿ペプチド)の作用による。

ANPは心房筋が進展されると分泌され、子宮体の輸入細動脈を拡張、輸出細動脈は拡張せずに軽度収縮させる。糸球体濾過圧が上昇して原尿を増やす。

 

臓器保護作用:hANP>硝酸薬??

hANPは細胞質内GCに作用、硝酸薬は細胞膜GCに作用する。

細胞質内GCに作用する場合のみ、動物実験で心保護作用が認められた。

実地臨床では、hANPの臓器保護作用を証明する文献はまだない。多分いつか出ると思うが・・・、ちなみに下記の文献で全死亡 再入院は減ると報告。

 

hANPの文献:

PROTECT study

重症心不全患者49例のうち、低用量カルペリチド(0.01-0.05γ、72h)と非投与群を比較。

カルペリチド投与群で、血中ANPとcGMP濃度が有意に上昇し、カルペリチドが内因性ANPの作用を増強したことを示した。

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長期予後(18か月のフォロー期間中の全死亡および再入院)が、カルペリチド群では11.5%、非投与群で34.8%であった。短期予後不明。

急性期血行動態や心筋障害指標のトロポニン値、腎障害指標のCreに有意差なし。

 

 

 

 

 

ミタゾラム経鼻投与について(有効性、投与量、投与器具など)

小児てんかんのけいれん重積に対するmidazolam点鼻投与の有効性と薬物動態に関する検討

脳と発達 2010;42:34-36

 

背景:

小児けいれん重積に対するガイドラインが提案され、血管確保が困難な症例に対するミタゾラム鼻腔/口腔な投与が明記された。

目的:

小児てんかんのけいれん重積に対するミタゾラム点鼻投与の有効性と薬物動態を検討した。

方法:

けいれん重積発作の既往があり、ジアゼペム投与 (静脈もしくは坐薬) が無効であった症例を対象(年齢11か月~10歳、平均3.4歳、計14例)とした。

点鼻投与はドルミカム®を原液のまま必要量を片側鼻腔に半量ずつ鼻腔内に投与し、点鼻投与した10分、20分、60分後のミタゾラム血中濃度を測定した。

(投与量は0.1-0.3㎎/㎏を目安に、血管確保が困難な場合は追加投与を行った。)

 

結果:

MDL点鼻投与は有効性が高く (完全止痙 : 65%)、速効性 (平均5.7分;1~15分) があった。

 

今回の投与量 (平均0.26mg/kg) では呼吸抑制は認めず安全性が確認できた。(ミタゾラムの投与量は、0.11~0.9㎎/㎏で1例のみ血管確保に長時間を要し結果的に総投与量が0.9mg/㎏になった)

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経時的な濃度測定が可能であった症例では、10分以内に急速な血中濃度の上昇が認められた。 投与方法が簡単で安全に使用できるため、小児救急現場において有用な手段と考えられた。

 

鼻腔噴霧器具:

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ミタゾラム:

半減期は約1時間で、CYP3A4が関与する肝代謝、点鼻投与は鼻粘膜から直接体内循環に入り肝臓で初回通過効果がないため、速やかに血中濃度が上昇する。成人ボランティアでの比較では点鼻と静脈注射ではピークに達するまでの時間はほぼ同じである。点鼻による最高ミタゾラム濃度は、経静脈投与の約半分である。

セフェム系抗菌薬の少量持続内服は尿路感染症の再発抑制・予防効果があるのか?

多施設における小児初発尿路感染症の検討

(cefaclor の持続少量抗菌薬予防投与による再発抑制効果について)

日本小児腎臓病学会雑誌 Vol. 30(2017) No. 1 

 

背景:

有熱性尿路感染症(UTI)の再発は、腎瘢痕形成に寄与する可能性があるだけでなく、患児とその家族に大き な負担となる。そのため、従来、再発のリスクの高いと 思われる児に対しては、持続的少量抗菌薬予防投与 (continuous antibiotic prophylaxis: CAP)がすすめられてきた。多くは sulfamethoxazole-trimethoprim(ST 合剤) を用いており、本邦で頻用される cefaclor(CCL)についての検討は少ない。

 

目的:

3 施設の初発有熱性UTI症例における、CCL(ケフラール) のCAPによるUTI再発抑制効果を同定する。

方法:

2004年4月から2013年3月に昭和大学横浜市北部病院・同藤が丘病院・聖マリアンナ医科大学病院の各小児科に入院した初発有熱性UTI症例のうち、6 か月以上経過観察できた126例を対象とした。

CCLのCAPを行った群(CAP群)と行わなかった群(非CAP群) の2群にわけ、患者背景・再発の有無について検討した。 また排尿時膀胱尿道造影(VCUG)を施行した症例は、膀胱尿管逆流(VUR)の有無も合わせて検討した。

結果:

126例(CAP群52例、非CAP群74例)で、両群の患者背景に有意差はなく、CAP群で有意に再発が少なかった。

またVCUG を施行した114例(CAP群50例、非CAP群64例)のうち、VURがある症例では、CAP群で有意に再発が少なかった(12%vs67%,p<0.01)。 CCL の CAP により,UTI の再発を抑制できる可能性 がある。><0.01%)。

結論:

CCLのCAPにより、UTIを抑制できる可能性がある。

HERDOO2ルール、静脈血栓症の抗凝固療法の中止基準

非誘発性静脈血栓症の女性におけるHERDOO2ルールを用いた治療期間の検証

BMJ. 2017 Mar 17;356:j1065. doi: 10.1136/bmj.j1065.

 

【目的】

HERDOO2ルールを前向きに検証する。危険因子が0-1項目のみの女性であれば、短期間の治療後に抗凝固剤を安全に中止することができる。

危険因子:

  • いづれかの下肢に色素沈着、浮腫、発赤
  • Dダイマー≧250μg/ml
  • 肥満:BMI≧30
  • 年齢≧65歳

 

【方法】

前向きコホート研究、7カ国の二次/三次医療センター44施設で実施。

5~12ヶ月間の間、初回の非誘発性静脈血栓症(膝窩静脈より近位の静脈に新たに発生した血栓と、1区域よりも近位の動脈に新たに発生した肺塞栓を対象)に対して抗凝固療法を実施した2785人が対象とした。

HERDOO2ルール:0-1点の女性は、再発性VTEの低リスク群として抗凝固中止(介入群)、男性および高リスク群(2点以上)女性は、中止するかを患者と主治医の判断に任せる(観察群)とした。1年のフォローアップ期間中に再発した症候性VTEを主要評価項目とした。

【結果】

低リスク群631人(51.3%)のうち、

591人が経口抗凝固薬を中止した。追跡期間中に、経口凝固薬17人がVTEを再発、1年当たりの再発率は3.0%(95%信頼区間1.8-4.8%)だった。

高リスク群(2点以上の女性)と男性のうち、

抗凝固薬の使用を中止していた323人では、追跡期間中に25人がVTEの再発していた。再発率は1年当たり8.1%(5.2-11.9%)だった。抗凝固薬の使用を継続していた男女1802人では、追跡期間中のVTE再発は28人で、1年当たりの再発率は1.6%(1.1-2.3%)だった。

男女別では、、

抗凝固薬を中止していた高リスク女性の再発率は7.4%(3.0-15.3%)、男性の再発率は8.4%(5.0-13.2%)だった。

【結論】

非誘発性VTEを起こしたHERDOO2のスコアが1以下の女性は再発リスクが低く、一定期間の治療後に抗凝固薬を安全に中止できる。