Case4. 幼児に認めた『限局性の巻き毛』の診断と合併症は?(J Pediatr 2021;234:278-9.)
【症例】3歳の男児。20か月時から頭皮の一部に、カールした毛髪を認めた。この疾患の診断と、最も頻度が高い合併症は何か?
A.同側の表皮母斑
B.心臓の異常
C.持続性瞳孔膜
D.歯の異常
診断
Woolly hair nevus(縮毛母斑)
通常、頭皮全体の縮毛は常染色体優性または劣性遺伝疾患であるが、頭皮の一部に限局する場合は ‘ Woolly hair nevus(縮毛母斑)‘と呼ばれる非遺伝性疾患である。
縮毛母斑は、全身疾患と関連している場合が問題となる。
解答
A.同側の表皮母斑(33票47%)⇒約50%と高率に合併!
B.心臓の異常(11票16%)
C.持続性瞳孔膜(11票16%)
D.歯の異常(15票21%)
縮毛について
ハッチンソンらが、縮毛を3つに分類
1.遺伝性縮毛(常染色体優性)
2.遺伝性縮毛(常染色体劣性)
3.非遺伝性の縮毛母斑
縮毛母斑(Wooly hair nerve)とは
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頭皮の1か所以上に限局して、色素沈着が少ない縮毛(コイル状で強く縮れた毛髪)が発育する。
- 生後2年以内に認められることが多く、一部が青年期に検出される。
- 多くが単独の分布であるが、最大4域の分布を取る。
- 新生児期は、コイル状の巻き毛ではなく、脱毛症の領域として現れることがある。これは、病変部の毛髪が、通常の髪と比較して髪の成長速度が遅いことを反映している。
- Trichoscopy;毛髪鏡 による所見が有用(色素沈着が少ない、コイル状、薄い)である
- ダーモスコピーは他疾患の除外に有用な場合がある
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他の正常部位と異なり、電子顕微鏡で毛小毛が存在しない。
- 3つのTypeに分類される
Type1(皮膚病変なし)、Type2(疣贅状表皮母斑あり)、Type3(後天性:若年成人で縮毛が出現/進行)
- 残念ながら、有効な治療方法はない
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通常は限局性の良性疾患であるが、全身に起こりうる合併症を認める場合が問題となる
縮毛母斑の全身合併症
- 約50%に同側の疣贅性表皮母斑を認める。そのほかに眼科(異色素性虹彩、持続性瞳孔膜)、聴覚(聴覚障害)、腎臓、心臓、神経、皮膚(色素分界線条、線状表皮母斑、白色海綿状母斑)、歯科(歯隙、下部犬歯の齲歯)、骨格(成長障害、短指症)
- 顔貌異常がある場合は、Noonan症候群 / ナクソス病(Naxos disease) / カルバハル症候群(Carvajal disease) / CFC症候群(Cardio-Facio-Cutaneous syndrome:心臓顔皮膚症候群)が疑われる
【参考文献】日本語の文献が全くない・・・。