小児総合診療医のひとりごと

小児科, 総合診療科(家庭医療), アレルギー についてのブログ

肺高血圧の病態、超音波検査、診断法(+α 新生児遷延性肺高血圧の治療)

肺高血圧症

・成人での肺動脈圧正常値:一般に『収縮期圧30~15mmHg、拡張期圧8~2mmHg、平均圧18~9mmHg』

・肺高血圧の定義:安静時右心カテーテル検査で肺動脈圧の平均値が25mmHg以上

・『収縮期圧で30mmHg以上、平均圧で20mmHg 以上の肺動脈圧』は肺高血圧の可能性を考慮

原発性肺高血圧症の診断を行う場合は、肺動脈平均圧25mmHg 以上、運動時30mmHg 以上を厳密な意味で肺高血圧の診断基準として用いる。

 

肺高血圧症のスクリーニング

心臓超音波検査で行うCheck point

・収縮期肺動脈圧≒収縮期右室圧≒4×(三尖弁閉鎖不全の圧格差)2+右房圧

(推定式は、重度の右室流出路狭窄や肺動脈弁狭窄、高度三尖弁輪拡大では使用不可)

右房圧の推定(新生児では概ね8mmHg)

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J Am Soc Echo 2010;23:685-713

 

*三尖弁閉鎖不全と肺高血圧の重症度は必ずしも相関しないため注意が必要

PSAP(収縮期肺動脈圧)と三尖弁閉鎖不全の重症度の関係

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Chest 2009;135:115-121

 

・右房・右室の拡大、心室中隔の扁平化

・TAPSE(参戦弁輪収縮期移動距離)の低下(<成人では16㎜未満で右室収縮能低下)

・右室流出路の血流速波形の変化

 肺動脈圧が上昇した場合は、波形ピークが収縮早期に出現する

 Act(駆出開始点から最大流速までの加速時間)/ET(右室駆出時間)が0.3未満で平均肺動脈圧が30mmHg以上と推定される

 高度では収縮中期にNotchを形成しW型の波形を示す

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 肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版)では?

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新生児遷延性肺高血圧症(Persistent pulmonary hypertension of the new bon)

様々な原因で廃欠陥抵抗が高くなり、卵円孔や動脈管を介する右-左短絡が出現した病態

(通常、動脈管での短絡は出生後の体循環系圧>肺循環系圧となり左-右or両側性短絡となる)

・PPHNを疑う臨床症状

100%酸素を吸入しても低酸素血症が改善しない

上半身と下半身でSPO2に較差を認める

・診断:

動脈管・卵円孔レベルで右-左短絡を認める

参考所見:三尖弁逆流、動脈管圧格差、肺動脈血流速度の減弱(肺高血圧が高度だと加速後急速に流速が減衰する)

 

鑑別診断:先天性心奇形(特に、総肺静脈還流異常

 

・血行動態:

右心系の後負荷上昇で、静脈血が卵円孔や動脈管を介して左室系になだれ込む。

肺から左心系に還る動脈血が少なく、静脈血が流れ込むため全身が強度のチアノーゼとなる。

シャントが動脈管レベルのみなら、上下肢のSPO2較差が生じる。

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・治療)

体血圧の上昇と肺血管の拡張(=肺動脈圧の低下)を目指す。

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参考文献:

周産期医学 2015 45;10:1439-1441.

血管医学 2016 17;3:281-290.

小児科診療 2014 77:917-920.

肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版).