小児総合診療医のひとりごと

小児科, 総合診療科(家庭医療), アレルギー についてのブログ

血清クレアチニン濃度が上昇したらACE阻害薬、ARBは中止すべきか?

Serum creatinine elevation after renin-angiotensin system blockade and long term cardiorenal risks: cohort study.

BMJ 2017;356:j791 | doi: 10.1136/bmj.j791

 

【目的】

ACE阻害薬またはARB治療開始後の血清クレアチニン濃度上昇と長期的な心腎転帰を検討する。

【方法】

1997~2014年における英国のClinical Practice Research DatalinkおよびHospital Episode Statisticsの記録を用いたコホート研究。ACE阻害剤またはARBによる治療を開始した122363人が対象。

治療開始後に30%以上のクレアチニン増加を有する患者およびクレアチニン増加が30%未満の患者において、末期腎疾患、心筋梗塞心不全、死亡率を比較した。クレアチニン増加10%ごとの累積死亡率も比較した。

【結果】

クレアチニンが30%以上増加した2078人(1.7%)のうち、女性、高齢者、心腎疾患、および非ステロイド性抗炎症薬、ループ利尿薬、カリウム保存利尿薬を使用していた人の割合が高かった。

クレアチニンの30%以上増加は、30%未満の増加に比べて、全アウトカム(末期腎不全、心筋梗塞心不全、死亡)で調整発生率比が上昇した;末期腎不全3.43 (95% confidence interval 2.40 to 4.91)、心筋梗塞1.46 (1.16 to 1.84)、心不全1.37 (1.14 to 1.65)、死亡1.84 (1.65 to 2.05)。

 

 Figure:

Cumulative mortality according to levels of creatinine increase after renin-angiotensin system blockade

Figure2

クレアチニン濃度の増加に関する分類(Cre:10%未満、10-19%、20-29%、30-39%、40%以上)で、全アウトカムにおいてクレアチニンが増加するほど累積死亡率の増加を認めた。

 

Figure:

Cardiorenal risks associated with levels of creatinine increase after renin-angiotensin system blockade

Figure3

クレアチニン30%以内の増加例は、全有害心腎転帰(末期腎不全、心筋梗塞心不全、死亡)の発生率比増加と関連していた。

死亡はCre:10%未満を基準とすると、Cre:10~19%増加で1.15 (1.09 to 1.22)、Cre:20-29%増加で1.35 (1.23 to 1.49)であった。

【結論】

ACE阻害剤または治療開始後のクレアチニン増加は、ガイドラインで推奨される治療中止基準である治療開始後Cre:30%増加 を下回っていても、有害心腎転帰と段階的に関連した。

 

クレアチニン上昇群は高齢・心腎疾患の割合が高いので、中止すべきか?に関してはガイドラインに従って中止を検討し今後の研究次第で変わってくるのではないだろうか?