聴性脳幹反応の見方
概要
・客観的に聴力を評価する。聴神経系を刺激することで得られる脳幹部での電位を頭皮上より記録したもの
・聴性脳幹反応(ABR)では、音刺激の後l~2ミリ秒の潜時(latency)を置いて、I波からⅦ波までの7つの波が1ミリ秒ごとに登場する
・I波が鍋牛神経,Ⅱ波からⅢ波は延髄から橋下部,Ⅳ波は橋上部,V波は下丘(中脳)に由来する
(I波潜時は音刺激からI波が出現するまでの時間,Ⅲ波潜時は音刺激からⅢ波が出現するまでの時間のこと)
・I波潜時は被検者の中耳機能の影響をまともに受ける
・通常は,I波が出現してから後続のⅢ波やⅤ波が出現するまでの間隔(ピーク間潜時interpeaklatency:IPL)を重視する
闘値検査としてのABRの適応
乳幼児、詐聴、聴神経腫傷の診断に有用
意義
1)闘値検査
小さな音刺激からスタートし、徐々に音圧を上げ、反応が認められる最小音圧を求める。この音圧をABR上の聴覚闘値とする。通常は、最も大きなV波で反応の有無を判断する。
あくまで聴覚闘値はABRのもので、頭皮から誘導した電気的変化なので、本来の閏値よりも約20dB高〈(悪く)なる。
(通常は音刺激として2,000~4,000Hzのクリック音を使用しているので、低音部の難聴を捕捉することはできない。したがって、ABR上の闘値を全面的に信頼すると、思わぬ誤診に至る危険がある。手間暇がかかるので自覚的聴力検査を信頼できる場合には、あえてABR上の悶値を求める必要はない)
2)聴覚伝導路の障害部位の推定
各波は聴覚伝導路に生じた電気的変化を反映するので、障害があれば、そこに至るまでの潜時が延長するとともに、その波形が乱れる。
(聴神経腫傷は、聴覚伝導路が侵されるためⅠ~Ⅴ波の潜時が延長する。下部脳幹障害を反映し、その潜時の延長の中心はⅠ~Ⅲ波にある。I波だけが認められ、Ⅱ波以降が消失することもある。)
波形が二重だが、同一の検査を二度行ったため、同じような波形が描かれれば、アーチファクト(実験操作によって出現した人工産物)でないことを確認できる。
乳幼児のスクリーングの流れ