小児総合診療医のひとりごと

小児科, 総合診療科(家庭医療), アレルギー についてのブログ

銅欠乏症、好中球減少

銅欠乏症による血球減少

2017年6月1日血液内科勉強会 A3用紙1枚で簡潔にまとめ

参考文献:Up to date 2017時点、血液内科第72巻第6号 820-824

 

Causes of neutropenia(Blood 2014;124:1251)

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銅欠乏症は、二次性好中球減少症の原因である

 

【体内の銅代謝

体内の全銅含有量は50-120㎎(新生児期~乳児は約12㎎)存在する

代謝経路:胃、十二指腸、空腸から銅トランスポーター(ATP7A)より吸収される

肝臓から体の各臓器には、セルロプラスミン(銅輸送蛋白)により運ばれる

*母乳は比較的少量の銅を含む。初期母乳は0.7mg/lの銅が含まれる。これは0.2mg/lに急速に低下し、WHO推奨銅摂取量よりも少なくなる。この時期の銅摂取量不足は、肝臓の貯蔵銅で補う。

 

【臨床的特徴・検査所見】

診断は、臨床的特徴と検査所見を総合的に判断する

症状:血球減少(図1)、神経障害(亜急性連合性脊髄変性症(VitB12欠乏)に類似)認知障害発達障害骨粗鬆症、頭髪異常(少ない毛、縮れ毛)、筋力低下、難治性痙攣、発達障害

検査所見:血清銅の低下(30μg/dl以下)血清セルロプラスミン低下(15㎎/dl以下)

*骨髄検査 骨髄異形成症候群と類似(小空胞を持つ赤芽球系細胞や赤芽球系の過形成、環状赤芽球、小空胞を持つ骨髄系細胞)

【銅欠乏症の原因】図2

先天性:Menkes病(メンケスP型ATPアーゼ:ATP7A異常、)

後天性:吸収不良症候群(炎症性腸疾患、Celiac病など)、胃十二指腸切除後/胃バイパス手術、慢性腹膜透析・血液透析患者、鉄・亜鉛過剰、Wilson病の治療過剰、不適切なミルク栄養未熟児、長期経管栄養、長期経静脈栄養

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図1 Eur J Haematol 2008;80:523

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図2 J Neurol 2010;257:869

 

厚生労働省が推奨する銅の1日推奨量

年齢

0-2歳

3-5歳

6-7歳

8-9歳

10-11歳

12-14歳

15歳以上

推奨量(㎎/日)

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.8-1

【治療】先天性代謝異常症の課題と進歩 脳と発達2012;44:107-112 より

(成人)銅2mg/日の投与、ココアによる治療も報告あり

*Up to dateでは銅欠乏症の脊髄神経症ギアを有する場合毎日8㎎を1週間投与し、2週間目に6㎎、3週目に4㎎、その後は2㎎を投与する

 

(小児:Menkes病)脳内移行性がよいヒスチジン銅を使用。治療目標は、血清銅・セルロプラスミン値を正常に保つこと(投与2か月以内に血球異常は改善する)

 ヒスチジン銅750μg/mlを0.5-1ml/回を2-4回/週の間隔で皮下注射する。治療開始が生後2か月以前だと神経障害が予防できる