小児総合診療医のひとりごと

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抗不整脈の使い方(Ⅰ群薬の入門)

不整脈

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誰も教えてくれなかった 循環器薬の選び方と使い分け(2017/3/30発行)より

Sicilian Gambit分類とVaughan Williams分類の両方を考えると理解しづらいため、まとめ。単純なVaughan Williams分類でまずは理解をすすめる。

 

Ⅰ群薬

使い分けのポイント:

  • 心房性不整脈心室不整脈か?
  • ベース心電図のQRS時間、QT時間は長いか?
  • 副作用は何か?

【分類】

心筋細胞の活動電位の持続時間(QT時間)の作用で分類

  • 活動電位の持続効果
  • チャネルへの結合・解離速度

Naチャネルの主要な作用は活動電位を発生させること。活動電位のごく最初に作用する。

心筋の興奮時の作用:

Naチャネルがひらく→Naチャネルブロッカーが結合する→次の興奮から作用する

(最初の興奮で結合したなチャネルブロッカーが次の興奮まで残ることで、次の興奮の最初にチャネルをブロックできるので作用が発揮される)

 

 

代表薬

① 活動電位持続時間(QT間隔)に対する作用

②チャネルへの月結合・解離の速度

③親和性の高いチャネルの状態

Ⅰa群薬

キニジン

プロカインアミド(アミサリン®)

ジソピラミド(リスモダン®)

ジベンゾリン(シベノール®)

ピルメノール(ピメノール®)

アジマリン(アスペノン®)

延長

中等度

活性状態

Ⅰb群薬

リドカイン(キシロカイン®)

メキシレチン(メキシチール®)

短縮

早い

不活性状態

Ⅰc群薬

フレカイニド(タンボコール®)

プロパフェノン(プロノン®)

ピルシカイニド(サンリズム®)

不変

遅い

活性状態

アプリンジンはⅠb群薬だが、性質がⅠa群薬に近いためⅠa群薬に分類

 

①⇒Ⅰa群薬はQTを延長させる、Ⅰb群薬は短縮、Ⅰc群薬は不変

②⇒結合・解離速度が速いⅠb群薬は、収縮時間が短く拡張期が長い心房筋では拡張時間の間にチャネルから外れてしまうので心房性不整脈には作用せず心室不整脈だけに使用する薬物と考えることができる。Ⅰc群薬は結合解離速度が遅いので、頻脈じゃない洞調時も比較的長い拡張期でもチャネルからかい離しないのでブロック作用を発揮するため、Baseの心電図でQRS時間の延長を示すことがある。

端的に言うと、Ⅰb⇒心室不整脈だけ、ⅠaとⅠc⇒心房・心室不整脈の両方に使用可

③⇒専門的なので割愛

【QRS時間とQT時間】

QRS時間の延長は催不整脈作用に関連する⇒QRS時間が延長している場合はⅠc群薬の使用は避ける

QT時間が延長はTorsade de pointesを起こす⇒QT延長している場合はⅠa群薬の使用は避ける

【副作用】

Ⅰ群薬を選択するときは、どの薬が効きやすいか決めるのは至難。

そのため、副作用が起こりにくい薬を選ぶ ということが多い。

 

心臓副作用:3つが重要

・QT延長に伴うTorsade de pointes ⇒主に、Ⅰa群

・QRS延長に伴うCAST型不整薬 ⇒主に、Ⅰc群

・心機能抑制作用 ⇒Ⅰa群とⅠc群薬、理由は不明だが中でもジソピラミド・フレカイニドで心抑制作用が強い

非心臓作用:4つが重要

Ⅰa群の抗コリン作用

プロカインアミド以外。キニジン;下痢・悪心などの消化器症状、ジソピラミド;尿閉・口渇が多く前立腺肥大症、緑内障は禁忌。

ジソピラミド、シベンゾリンの低血糖

リドカインの神経作用

アプリンジンの肝障害・汎血球減少

 

◎実際の使い分け手順:

心室不整脈では、副作用の少ないⅠb群薬を選択する

心房性不整脈では、Baseの心電図でQRS間隔が長い場合はⅠc群を避けて、Ⅰa群を選択する。QT間隔が長い場合Ⅰa群を避けてⅠc群を選択する。

心不全がある場合は可能ならⅠ群薬を避けて、どうしても使うならジソピラミド、フレカイニド以外を選択する。これらの制約がない場合は、Ⅰ群薬の副作用を考慮して前立腺肥大症や緑内障がある患者には、抗コリン作用がないプロカインアミドかⅠc群、糖尿病患者ではジソピラミド・シベンゾリン以外を選択する。