小児総合診療医のひとりごと

小児科, 総合診療科(家庭医療), アレルギー についてのブログ

小児と成人の高カリウム血症の診断と治療管理①(総論)

【高カリウム血症の診断と治療管理  総論】

●Point:高K血症の基本事項を確認する 

不足分は、小児の高カリウム血症の

drtasu.hatenadiary.jp

診断と治療管理②(検査と治療の総論)を参考

 

高K血症の定義:原則(検査対象は)、血清カリウムが5.5mmol/lを超える

ただし新生児では基準値が高めとなる

 K基準値:早産児 4-6.5mmol/l、新生児 3.7-5.9mmol/l、乳児 4.1-5.3mmol/l、1歳以上 3.5-5mmol/l

 

原因:

①腎排泄の減少

②過剰な摂取

③細胞内からの漏出

⇒ なので治療は、腎排泄を増加、摂取減少、細胞内へのカリウムシフト増加 する薬剤の投与となる

 

カリウムの排泄

主に腎臓で起こる。腎外排泄のメカニズムは、カリウムの細胞外シフトや胃腸からの漏出(毎日カリウム摂取量の約10%が胃腸管を介して取り除かれる)がある。

糸球体濾過率(GFR)が15ml /分/1.73m 2未満に低下するまで、腎カリウムホメオスタシスを維持可能である。

 

腎臓におけるカリウム調節機構

カリウムは糸球体で濾過され、Henleの近位尿細管およびループ脚でほぼ完全に再吸収される。排泄は主に皮質採集管で起こる。

ろ過されたカリウムの約20%は、Henleの太い上行脚に再吸収される。

 

腎外のカリウム調節機構

細胞内へのカリウムシフトを増加させる:インスリン、アシドーシス、アドレナリン、ノルアドレナリンドーパミン

 カテコラミン機序⇒筋細胞上のβ2レセプターに結合するカテコラミンが細胞へのカリウムシフトを増加させる

インスリン機序⇒肝臓および筋細胞へのカリウム取り込みを増加させる

 

カリウムの摂取目安量

厚生労働省の摂取目安量

 成人の値:男性 2,500 mg/日、女性 2,000 mg/日

 小児は下記:

 0~5 か月:400㎎/日、6~11 か月:700 mg/日、1-5歳は量的な詳細報告がなく目安量の設定が困難

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小児Kの目安量(日本人食事摂取基準2015、厚生労働省より)

カリウムの耐容上限量

 腎機能が正常である限り、過剰摂取になるリスクは低い。したがって、耐容上限量は設定しない。ただし、腎機能が障害されている場合には摂取量に注意する。(厚生労働省食事摂取基準より)

 

一般的なカリウムが豊富な食品

カリウムは、果物、ジャガイモ、豆、および穀物が多い。

 カリウム(K) 1 mEq = 1 mmol ≒ 39 ㎎

食べ物

K含有量mmol

食べ物

K含有量mmol

バナナ(1個85g)

8.6

オレンジジュース(200ml)

7.9

ブルーベリー(100g)

1.9

ミルク(200ml)

7.7

マッシュルーム(75g)

8.1

コカ・コーラ(200ml)

0.1

ブロッコリー(75g)

5.8

ポテトチップス(20g)

5.1

納豆(75g)

3.9

ミルクチョコ(20g)

2.4

タマネギ(75g)

1.5

ホワイトチョコ(20g)

1.8

フライドポテト(150g)

17.7

ワインガム(20g)

1.8

玄米(150g)

2.2

スパゲティ(150g)

2.3

 

カリウム血症の原因

カリウム摂取過剰

①輸血

②K製剤

③ハーブ類など

腎機能や他の調節機構が正常なら、高カリウム血症を生じるために、極めて多量のカリウムが必要となる。腎機能障害(特にGFRが15未満)で起こりやすい

カリウム排泄障害

①薬剤:ACE阻害剤/ARB/スピロノラクトン/エプレレノン/NASIDs/ヘパリン/シクロスポリン/タクトリムス/~ナゾール系の抗真菌薬/ST合剤/ペンタミジン

②急性/慢性腎機能不全(特にGFR<15はカリウム腎排泄の減少をもたらす)

③低アルドステロン症

④偽性低アルドステロン症

⑤先天性副腎過形成(約90%が21-ヒドロキシラーゼ欠損症)

⑥うっ血性心不全

⑦便秘症(カリウムの経腸排泄の減少)

細胞外への漏出:

①薬剤:β遮断薬/ジゴキシン/高浸透圧利尿剤/ST合材/サクシニルコリン/

②アシドーシス

③糖尿病(インスリン低下)

④高浸透圧(高血糖・マンニトール)

⑤組織壊死

⑥周期的四肢麻痺(骨格筋のNaチャネル変異)

 

カリウム血症の診断

カリウム血症の分類:

 軽度(5.5-6.5mmol / l)、中等度(6.5-7.5mmol / l)重度(> 7.5mmol / l)

カリウム血症は症状に関連することはまれ。

時に動悸、吐き気、筋肉痛、または感覚異常を訴える。

血清カリウム> 6.5mmol / lの患者では、心電図検査(ECG)の監視が必須。

検査は体系的で、常に心機能、腎臓および尿路の評価ならびに水分状態および神経学的評価を含むべきである。

 

 

 

参考文献:

・Up to date「Causes, Clinical manifestions, and evaluation of Hyperkalemia in Children」

・Pathogenesis, diagnosis and management of hyperkalemia. Pediatr Nephrol  2011 Mar; 26(3): 377–384.

・内科救急診療指針2016