潜在性甲状腺機能低下症に補充療法をすべきか?
潜在性甲状腺機能低下症の治療について
Thyroid Hormone Therapy for Older Adults with Subclinical Hypothyroidism
NEJM. Apr 3. doi: 10.1056/NEJMoa1603825.
背景:
潜在性甲状腺機能低下症で甲状腺ホルモン補充を行うかは議論されるところである。
方法:
二重盲検ランダム化対照試験。 65歳以上の高齢者において、無症候性甲状腺機能低下症に対して甲状腺ホルモン治療を行い有益であるかを検証した。
TSH(サイロトロピン)が4.6~19.99mIU/Lと上昇しfT4(遊離サイロキシン)が基準範囲の65歳以上の患者は737人が対象。368人はレボチロキシン(チラーヂン)内服群とした(50μg/日Or 50㎏未満または冠動脈患既往なら25μg/日 で開始しTSHが0.40~4.59mIU/Lの範囲になるよう調整した)。369人はプラセボ群とした。
1次評価項目は、1年間でのhyroid-Related Quality-of-Life Patient-Reported Outcome
甲状腺機能低下症の症状スコア・倦怠感スコアの変化とした。(これらの指標のスコアはいづれも0~100点で、高スコアほど症状は深刻で、臨床的に意義のある最低差は9ポイントであった。)
結果:
平均年齢は74.4歳。53.7%(396人)は女性であった。
ベースラインのTSHの平均値は6.40±2.01mIU/L、1年後、プラセボ群は5.48に減少、レボチロキシン補充群は3.63mIU/Lであった(P<0.001)、またレボチロキシン投与群の中央値は50μg/日であった。
両群を比較すると、1年後の甲状腺機能低下症の症状スコアと倦怠感スコアに差はなかった。
1年後の甲状腺症状スコアの変化:
投与群 0.2±14.4、プラセボ群 0.2±15.3。群間差は0.0;95%信頼区間-2.0から2.1
1年後の疲労スコアの変化:
投与群3.8±18.4、プラセボ群3.2±17.7。群間差は0.4;95%信頼区間-2.1から2.8
2次評価項目であるQOL(EQ-5Dスコア)、握力、血圧、BMI、腹囲、日常生活動作にも投与群で有意差は認めず有用性は認めなかった。
重篤な有害事象(心房細動、心不全、骨折、新規発症の骨粗鬆症)の発生率にも差は無かった。
結論:
高齢の無症候性甲状腺機能低下症患者に対するレボチロキシン投与は、明らかな有用性がない。