小児総合診療医のひとりごと

小児科, 総合診療科(家庭医療), アレルギー についてのブログ

超音波検査(体表エコー)は壊死性筋膜炎の鑑別に有用か?

 

Ultrasonographic screening of clinically-suspected necrotizing fasciitis

Acad Emerg Med 2002 Dec;9(12):1448-51.

 壊死性筋膜炎の超音波検査の有用性について

【目的】

壊死性筋膜炎における超音波検査の精度を決定する。

【方法】

前向き観察研究、対象は1996年から1998年に救急外来を受診した四肢の壊死性筋膜炎疑い患者。全患者に超音波検査を実施。

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壊死性筋膜炎の超音波診断基準:対側と比較して「deep fascial layer:深部筋膜層に、深さ4㎜以上の液体貯留があり皮下組織にびまん性の肥厚を認める」場合とした。最終的な診断は、壊死性筋膜炎の病理学的検査によって決定した。

 

【結果】

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62名の患者についてデータを収集。そのうち17名(27.4%)は壊死性筋膜炎であった(他は、39人が蜂窩織炎・4人が深部静脈血栓症、2人が筋炎)。

超音波検査の感度:88.2%、特異度:93.3%、陽性的中率:83.3%、陰性的中率:95.4%だった。壊死性筋膜炎の診断精度は91.9%であった。

【結論】

超音波検査は筋膜炎診断に有用である。→研究限界:台湾の1施設研究、対象は四肢の壊死性筋膜炎のみ。

 

Diagnosis of Necrotizing Faciitis with Bedside Ultrasound: the STAFF Exam

West J Emerg Med. 2014;15(1):111–113.

壊死性筋膜炎における超音波検査のポイント:STAFF

壊死性筋膜炎の初期段階は、蜂巣炎および丹毒などの軟部組織感染と臨床的に区別がつかず、早期診断が困難になる。CTやMRIは時間がかかる(場合によってはすぐ利用できない)。皮下の肥厚(subcutaneous thickening)、空気(air)、および筋内の液体貯留(fascial fluid)、略してSTAFFをベッドサイドで評価し、迅速に診断された壊死性筋膜炎の1例を経験した。ただし、十分な感度がないため診断の除外はできない。

 

Cellulitis, A Review

JAMA July 19, 2016 Volume 316, Number 3

蜂窩織炎の画像検査に関して:抜粋

壊死性筋膜炎の初期段階は、蜂巣炎および丹毒などの軟部組織感染と臨床的に区別がつかず、早期診断が困難になる。CTやMRIは時間がかかる(場合によってはすぐ利用できない)。

超音波検査は、蜂窩織炎の診断のためではなく膿瘍などドレナージが必要な液体貯留などの重症感染の区別に役立つ。

骨髄炎も蜂窩織炎に合併するので必要があればMRI/CTを行う。

MRIやCTは壊死性筋膜炎と化膿性筋炎の鑑別にも役立つ。

壊死性筋膜炎におけるCTの陰性的中率は100%、陽性的中率は76%で壊死性筋膜炎のうちCTでガス像を認めたのは36%であった。

蜂窩織炎深部静脈血栓症の低リスク(発生率:3.1%)、圧迫超音波検査は蜂窩織炎において深部静脈血栓症のRule outするためのCommonな検査である。ただし臨床的に強く疑われなければRoutineで行う必要はない。