小児総合診療医のひとりごと

小児科, 総合診療科(家庭医療), アレルギー についてのブログ

中耳炎の再評価は3日後でよいのか?

2013年版小児急性中耳炎の診療ガイドラインでは

抗菌薬の臨床効果の発現は早ければ投与後3日目にみられることが示唆され、投与後3日での効果の評価が推奨される。

と記載されている。

 

ガイドラインにはその根拠として、下記文献を引用していた。

 

A Placebo-Controlled Trial of Antimicrobial Treatment for Acute Otitis Media

N Engl J Med 2011; 364:116-126

 

内容:

AMPC/CVA投与群(7日間)とプラセボ群のランダム化比較試験で、治療不成功(Treatment failure)の率は3日目から両群に有意差を認めた。

 

方法:

6-35か月の急性中耳炎児を、無作為化二重盲検試験を用いて、7日間のAMPC/CVA(アモキシシリン40mg/kg/日、クラブラン酸5.7mg / kg /日、1日2回投与)内服群(161人)とプラセボ群(158人)で比較した。

Primary outcomeは治療終了時(来院8日目)までに治療が失敗する期間とした。治療不成功(Treatment failure)は、中耳炎所見や(副作用を含めて)全身状態が悪化した場合と定義した。

 

結果:

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治療不成功は、

AMPC/CVA群では18.6%でプラセボ群は44.9%であった(P<0.001)。AMPC/CVA内服することで、治療失敗への進行を62%減少させた(Hazard ratio:0.36、P<0.001 )。

 

Rescue treatment(中耳所見や全身状態が悪化したため治療を変更した)は、

AMPC/CVA群では6.8%でプラセボ群は33.5%であった(P<0.001)。AMPC/CVA内服することで、Rescue treatmentを81%減少させた(Hazard ratio:0.19、P<0.001)。

解熱剤または鎮痛剤を、AMPC/CVA群は84.2%、プラセボ群は85.9%が必要だっただったが、同程度の使用であった。

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治療不成功(Treatment failure)の率は、3日目から有意差を認めた。

プラセボ群では、治療不成功・治療変更(Rescue treatment)は3日目から有意に多かった。

 AMPC/CVA群に関しても、治療不成功・治療変更率は3日目から多くなっていた。

 

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治療終了後(8日目)に、AMPC/CVAではプラセボ群より良好な全身状態・鼓膜所見であった。改善なしor悪化は、AMPC/CVA群で6.8%(11人)でプラセボ群は29.7%(47人)であった。

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有害事象はAMPC/CVA群群でより多かった。

AMPC/CVA群では47.8%に下痢を認め(プラセボ群:26.6%、P<0.001)。

AMPC/CVA群では8.7%に湿疹を認めた(プラセボ群、P=0.04)

 

AMPC/CVAによる治療は、発熱、食欲不振、活性低下、癇癪を著しく改善した。

発熱の改善効果は、最初の投与を行ってから6時間後にみられた。食欲不振、活動の低下、癇癪の解消効果は、2病日にみられた。

耳痛、耳の擦り傷、落ち着きのない睡眠、過度の啼泣は、AMPC/CVA内服で効果はなかった。